マイペース



「名前っ!」

『なんですか?』

「お、お前…、何をしている…!」

『何って…、クッキー作りですよ?』

「……」




俺はHRになってもなかなか現れない名前を捜しに学校中走り回ったというのに…、
調理室でクッキーを作っていたぞ




「作りたい気持ちはわからなくもないが、もう授業が始まるんだ…」

『え?もうそんな時間ですか?』

「あぁ」

『わかりました、すぐに片付けますね!真斗くん、待ってて下さい』

「あ、あぁ…」




俺は仕方なく待つことにし、扉に寄りかかった。
名前の喋り方、マイペースな性格。見ればわかると思うが、彼女は四ノ宮那月の妹・四ノ宮名前だ




『あ、真斗くん見てください!うさちゃん型のクッキーです〜』

「そ、そうだな。上手く出来ていると思うぞ。それより片付けを…」

『ふふ』




しかし、名前が作る料理は失礼だが四ノ宮よりとても美味しい。




『わぁー!見てください!小鳥さんが木の枝にとまってます』




ふと名前を見ると、外に向かって指をさしていた。
その指の先には、木の枝に小さく可愛らしい小鳥が1匹止まっていた。




「…あぁ、そうだな」

『可愛いですね』

「お前のようだ…」

『え?』

「体が小さくて、いつの間にかどこかに消えて行ってしまう。探すのが大変だ」

『私、小鳥さんですか?』

「あぁ」




俺が、ついつい名前を許してしまうのは、きっと名前が好きだからなのだろう。




『嬉しい!ありがとうございます真斗くん!』

「い、いや…」




小鳥を見ていると、もう1匹同じような小鳥が現れ、2匹で飛びだってしまった。




『今来た小鳥さん、真斗くんみたいでしたね!』

「なぜ俺だと…?」

『だって、今の状況みたいに私を探して、見つけてくれたみたい…』

「…なるほど」







きーんこーんかーんこーん




「なっ!!授業開始のチャイムだ…!急いで片付けろ名前!」

『!』

「くっ…!これじゃ間に合わない!!」

『急ぐと危ないですよ?』

「急がないと授業に間に合わないのだが…」

『ダメです』




急いで片付けている俺の手を、名前が両手で包み込んできた。




「っ!?」

『真斗くんの手は音を奏でる魔法の手です。包丁などで手を傷つけたら私、とても悲しくなります…』

「名前…」

『だから、急いではダメですよ?』




その言葉と同時に彼女は手に力を込めた。
しかし四ノ宮の妹なので、包まれている俺の手が少々痛い。


俺は名前の手から離れ、今度は俺が彼女の手を包み込んだ。
名前の手は女性の手で、柔らかく細い




『?』

「名前…」




俺はゆっくりと名前の頬にキスをした




『……』

「お前は本当に可愛すぎる。どこまで俺を好きにさせるのだ…」

『ま、さとくん…』

「名前は俺が嫌いか?」




彼女の瞳を見つめながら真剣に問いかけた。彼女はとても驚いたようだ

しかし、すぐ笑顔になった




『いいえ、私も真斗くんだーい好きです』

「っ!?」




俺達は結局、授業には出なかった。しかし嬉しい事に、名前と晴れて恋人同士となったのだ。
学園長には内緒だぞ?




『那月くんに言ったらびっくりしますかね?』

「驚くのではないか?」

『あの、驚かせてもいいですか?』

「あ、あぁ…」




俺はどうしても毎回彼女のペースに乗ってしまう…。それほど、名前に惚れてしまっているんだろうな





マイペース
(真斗くん、好きですよ
(わ、わかった
(愛おしいです
(…俺も愛している



20130312

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