やっと言えた



時は戦国…




「あーあ、君が敵じゃなかったらよかったのに…」

『ねぇ、人を殺すのってどういう気持ち?』

「別に何も感じない」

『ふーん、嘘つき』

「……」

『さっきから手に持ってるクナイ振り下ろしてこないじゃん』

「うるさい」




初めて会ったばかりの彼はもちろん名前も顔も知らない他人。だけど、不覚にも一目で恋に落ちてしまったのは事実。
私は敵の忍に命を狙われていて、逃げていたけど最悪な事に捕まってしまった。

そう彼に…




『顔が歪んでる』

「うっさいな!!黙れよっ!集中できないだろ!!」

『もしかして、私の事好きなの?』

「黙れっ!!!」

『…がっ!』




クナイが心臓に深く突き刺さる。全身から汗が出る。とても痛い。痛くて顔が歪む。

ここで終わっちゃうんだ…


私の人生こんなもんか…




『いっ…たぁ…』

「は、はは…黙らない君が悪いんだよ」

『く、るし…、くる、しぃ……よ...』

「……っ」




そんな顔しないでよ。何も感じないって言ったくせになんで泣きそうな顔するの?泣くの我慢してる子供みたいだよ。
傷ついたようなその顔、好きじゃない…
私は貴方の笑顔がみて見たいの。


ねぇ、笑ってみせて?





















『…はっ!!』




な、んだ夢か…
あれ?どんな夢見てた…?
まぁいいや、今日から新しい学校だし早めに準備して行かなきゃ!!

なんかとても悲しいような夢を見た気がする。覚えてないのに、モヤモヤする




『よし!行きますか!』




今日から早乙女学園に入学します!
ずっと音楽関係がやってみたくて、受験してみたら合格を頂きました!!
ワクワクドキドキです!

確か、Aクラスだった気がする…




『あ、1番後ろラッキー』

「はーい!みんな席に着いてー!」




私が席に着くと同時に綺麗な女性が教室に入ってきた。
あ、あの方は…!綺麗な人だけど実は男性の月宮林檎さん!!現役じゃないですか!!!
うわー!うわー!!

月宮先生は、私達に早乙女学園での注意事を話してくれました。




「…それじゃあ早速自己紹介しましょうか!」

「はいはーい!俺からやりたい!」

「そう?じゃあ1番前の元気な男の子からお願いね!」

「は〜い!…俺は、一十木音也!よろしく!」

『!?』

「趣味はギターで……」




彼が後ろを振り向いた時、なぜか心臓の鼓動が早くなった。恋うんぬんとかそんな甘いものじゃなく、怖いものを見た時の鼓動に似ている。
私はあの人が怖い…?なぜ?




「はーい、ありがとう!次は飛んで1番後ろの貴方にしましょう!」

『え、わ、私!?』

「そうよ、お願い!」

『……』




可愛い声と姿で言われてしまえば、断れる事もなく。
仕方なく立ち上がった




『苗字名前です!趣味はカラオケだったり…、でも作曲家希望です!よろしくお願いします!』

「は〜い、ありがとね!」




席に着いて前を見ると、一十木くんと目が合った。彼はなんて言うか…驚いているような顔をしてる。何?私の顔に何かついてる!?何か変な事言った!?

見つめ合っていたら一十木くんが先に目を逸らした。
なんだったのだろう…。怖かった…



そして自己紹介も終わり、パートナー決めの時がやってきた。これで卒業オーディションまでの運命の人が決まるのね!




「…ねぇ、苗字さん」

『!?』

「俺の事、覚えてる…?」

『…一十木音也くん、じゃないの?』

「うん、まぁそうなんだけど…そうじゃないんだ」

『…?』

「はーい!みんな好きなところを持って!」




何が言いたいんだろう…。
でもすごく怖い。初めて会ったのに怖いとかすごい失礼だよね…

そんなこんなしてるうちに、パートナー決めの運命の赤い糸が出てきた。

これで、運命の人が…!!



引っ張って、私と繋がっている1本の紐を見ると…




『っ!!』

「あ、よろしくね!」

『一十木、くん…』




最悪な気分だ…










***



「…苗字さん、俺の事怖いの?」

『え!?いや、怖いっていうか…』

「…怖いんでしょ?」

『…うん』




放課後、私と一十木くん以外誰もいない教室で卒業オーディションに向けて曲を作っていた。




「なんで?」

『…わかんない』

「…いや、俺のせいなんだから仕方ないよ」

『え?』




なんで、そんな悲しそうな…泣きそうな顔するの…?
あれ?こんなのどこかで…、いや、全然わからないや




「…ごめんね?」

『う、うん?』

「忘れてても仕方ないよね」




ペラペラ喋る一十木くん。ちょっと話についていけず混乱する。




『…一十木くん、どうしたの?』

「本当は思い出してほしかった…」

『え、ちょっ!一十木くん!?やめっ…!離れて!』




急に抱きついてきた一十木くん。え、なに?怖い怖い怖い




「ごめん!怖いよね!でも…俺を見て、怖がらないで!!」

『っ!』

「ずっと探してた…。苗字さんに会えないかって、やっと今日会えたんだ…!」

『なんで、ずっと…?』

「だって…俺の初恋だったんだもん、忘れないよ」

『でも、小さい頃会ったことないと思うんだけど…』

「だいぶ昔の事だから、ね」




なんだろう、彼の悲しい笑顔をみて心がちょっと温かくなった。
どうして…涙が流れるの?




「そ、そんなに嫌だった…?」

『違う!違うの…』

「……」

『なんだろ、止まらないよ…』

「昔はごめんね、今度こそ君を守るから」

『…私の事、好きなの?』




そう聞くと、驚いた表情をしていた。
けどすぐ太陽のような笑顔になって




「前は答えられなかったけど、今なら言えるよ!大好き、愛してる!」




そう言った瞬間、私の一十木くんに対する恐怖がフワッと消えて、左胸の鼓動が速くなった。




20150205

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