寂しいんだよ



『藍ちゃんのわからずやっ!!』

「はぁ?名前も大概わからずやだと思うけど」

『むぅ…!藍ちゃんなんか嫌いだ!!2度と私に顔見せないでっ!!』

「それが出来ていたら、僕だって名前の顔なんか見たくもないね」




朝っぱらから大喧嘩。
よくくだらない事で口論になるけど、今回は絶対に許さない。

聞いてくださいっ!!藍ちゃんったら夜帰ってこないで、朝になって帰ってきたんですよ!?
理由聞いたら「スタッフの女性と部屋で過ごした」ってだけで、詳しく教えてくれない。
だからムカついた。詳しく言えないって事は、やましい事があったからとみなす




『藍ちゃんのバカッ!!別れてやる!!!』

「あっそ、勝手にすれば」

『―っ!!』




藍ちゃんの素っ気ない態度に腹が立ち、家を飛び出した。ホントにムカつく!
でも、家を飛び出したところでどこに行けばいいんだ…?あそこは私の家でもあるし…




『春ちゃん家…、行こう』

「あれ?名前ちゃんじゃなーい?」

『ん?あ、月宮先生!偶然ですねー』

「あ、ねぇ!一緒に買い物に付き合ってくれない?少しくらい買ってあげるわよ〜」

『マジっスか!?行きます行きますー!』




やったー!
月宮先生は優しくて大好きだっ!藍ちゃんとは違ってねっ!








***



「名前ちゃんは、どれがいい?」

『この服なら月宮先生に似合うと思いますよ』

「あら、ホントに?じゃあ買っちゃいましょ!…色違いもあるのねー、名前ちゃんもお揃いにしましょうよー!」

『月宮先生とお揃い嬉しいです!』

「買ってきちゃうわね」

『はーい!』




月宮先生は服を持ってレジへと向かった。
私は入り口付近で月宮先生を待つ事にしました。携帯の画面を見る。
もう20時か…




『藍ちゃんご飯とか大丈夫かな…って何を心配してんだろ』




もう別れたんだから藍ちゃんなんか気にしなくていいんだよ!!




「お待たせー!はい、これ名前ちゃんのよ」

『わーい!ありがとうございますー!!』

「いーえ、それじゃ、帰りましょうか」

『あの、それなんですが、今日だけ泊めさせてください…!!』

「え?…いいわよ、そのかわり、家に着いたら話、聞かせてちょうだいね」

『はい!』










***



「あら…!じゃあ、藍ちゃんと別れちゃったの!?」

『はい。それで家を出たんです…』

「藍ちゃんも酷いわね〜、詳しく言ってくれないなんて…」

『…藍ちゃんは私に飽きたんですよ』

「……」

『というか、もう別れたんでいいんです!』

「本当にいいの?名前ちゃんは後悔しない?」

『……』




いつもより、真面目な顔の月宮先生。
後悔、するに決まってる…




『…でも、藍ちゃんが何も言ってくれないのは、悲しいんです…』

「…そうよね、変な事聞いちゃってごめんなさいね」

『月宮先生は謝らなくても…!!』

「今日は、忘れちゃうくらい楽しみましょう!」

『はいっ!』




藍ちゃんの事なんか忘れてたやるんだからっ!
月宮先生がたっぷりお酒を持ってきてくれて、ガールズトークで楽しい話を日が出るまでしていたが、限界がきて私達は眠ってしまった。

























ピピピピッ



『…んっ、』

「…あら、もうお昼…?」

「やっと起きた」

『「おはよー…!?」』




机に伏せながら寝ていた私達は、めざましのおかげで起きた。
けど…、なんか1人多い気がするのは何故だ…?




「やぁ、こんにちは」

『「あ、藍ちゃん!?」』




後ろにあるソファーに優雅に座っている藍ちゃん。
…なんで月宮先生の家にいるの?




『…ふんっ』

「…やだ!お化粧直してこなくちゃ!」




月宮先生は、洗面所に行くとお風呂に入りだした。
え、今行くの…?




『せんせえ〜…』

「はぁ、帰るよ」

『いや!』

「…いいから」

『イヤだ!藍ちゃんなんか嫌いだもん!!』

「……」

『あっち行って』

「言ってる意味がわからない」

『な、なんでよ』




行ってって言ったのにソファーから立って、私の隣に座る藍ちゃん。




『…なに?』

「言っておくけど、月宮林檎だって見た目は女でも、男だからね?」

『…だから?』

「少しは危機感持ちなよ」

『心配してくれるのはありがたいけど、藍ちゃんに言われたくない』




うぅー、珍しく心配してくれてるのに、素直になれない自分に腹が立つ!
ため息をつく藍ちゃんの表情が見れなくて飽きられたのかなって怖くなった。




「…わかった、詳しく言うよ。彼女が傍にいて欲しいって言ってきたから部屋にいただけだよ」

『十分やましいじゃんか!!』

「傍にいた、それだけ」

『…なんで?』

「は?」

『なんで私よりその彼女の傍にいるの!?』

「それは…」




やましい事はなくたって、傍にいたのは許せない。私より彼女が大切って事でしょ?




『なんで、何も言わないの…?』

「藍ちゃん、名前ちゃんこれでもすっごい傷ついてるんだから」

『月宮先生…』

「……」




お風呂から出てきた月宮先生は、サイズの大きいTシャツ一枚を着ていて、カツラもかぶっていた。




「いい?藍ちゃん、たとえ他の女の子が「傍にいて」って言ってきたとしても名前ちゃんがいるんだから、簡単に部屋に泊まっちゃダメよ?」

「…うん、わかった」

『……』

「名前、ごめん」

『…私も、ごめんね』




月宮先生のおかげで仲直りする事が出来た。
藍ちゃんが謝るなんて珍しいな…、私も悪かったよね




「…帰るよ」

『うん…』

「仲良くやるのよー」

『「はい」』









***



『……』

「名前おいで」

『?』




自分達の家に着くと、藍ちゃんが私を呼んだ。




『…何?』

「僕、よくわからなくて…あの子もスタッフとして大切だったから」

『…うん』

「でもやっぱり名前が一番大切なんだ。昨日名前が帰って来なくて、改めて思ったんだ。それは本当だよ…?」

『うん…!』




笑顔で藍ちゃんに近づくと、私を優しく抱き締めてきた。私も彼の背中に腕を回す




『私も藍ちゃんが一番大切で、一番大好きだよ』

「ありがとう、名前」








寂しいんだよ
(名前
(なに?
(やましい事は?
(してないから!


20130810

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