雪だるま



『聖川様…』




私はソファーに座りながら、TVに映っている聖川真斗を見つめている。あの人に触れたい。
恋をしてはいけない人に恋をしました。


でも一度だけ…
その手に触れた事がある。聖川様は忘れているかもしれないが、私は鮮明に覚えてる。

だってあれが私の初恋だから―…




『…はぁ、辛い』




よりによって聖川財閥の長男、聖川真斗様を好きになってしまったなんて…。かれこれ10年は片想いしてるかも…




『だいたい、あの時あんな事にならなきゃこんな想い10年もしてないんだよ?彼氏すら出来ない!!』




現在高校2年、まだまだピチピチの16歳!彼氏一度も出来た事なしっ!!




『私だって彼氏欲しいのー!』

「うるせぇよ姉ちゃん」

『だったらあっちにでも行きなさいよ』

「やだね」




隣で一緒にソファーに座っている弟も立派にムカつく野郎に育ちました




『聖川様…』




あの時、聖川様と遊んだ1日は楽しかったな…。あの日の思い出は全部私の宝物




『聖川様…』

「さっきから“聖川様”うるさいんだけど、財閥の人がどうしたの」

『好きなのっ!!』

「…現実見たら?」

『バカにするんじゃないわよ!本気なんだから!』

「はいはい、…で、なんで好きなの?」

『あの時のせいよ、私が6歳の頃の話』

「…男の子と遊んだって言ってた時か?姉の唯一の男友達」

『多分それ!』

「嘘でしょ、それ」

『え?』

「だって財閥の長男がここら辺ウロウロするはずないじゃん」

『逃げて来たって…』

「…6歳で?」

『うん』












***



ー10年前ー



『できた!雪だるま』

「姉ちゃんスゲー!」

『でしょ!?アンタもやりなよ!ホラっ!』

「おれ、そういうの不器用なの!!」

『かわいい…』

「お、お母さん呼んでくる…」

『わかったー!!!』




雪が積もった日、家の庭で弟と2人で雪だるまを作っていた。(実際は私だけ作ったけど)
弟は、お母さんを呼ぶために暖かい家の中へと入っていった。

すると後ろから声をかけられた




「ねぇ」

『ん?』

「…それが、雪だるまって言うの?」




雪だるまを作っていたところを見られていたらしく、振り返ると自分と同じくらいの年かな?
まぁ、とりあえず男の子がいた




『そうだよー!君、雪だるま知らないの?』

「うん。僕は聖川真斗」

『ひ、ひじり…か…?』

「聖川、…真斗でいいよ」

『真斗くんは、雪好き?』

「うん」

『ふーん…。あっ!お家どこなの?1人?』

「僕は1人。家は…ずっとあっちにある」




真斗くんは右腕を上げて、遠くの方を指差した。なんか…、かなり遠くないですか?




『…帰れるの?』

「帰りはしないよ、逃げてきたから」

『な、なっ!お家の人きっと心配してるよっ!?』

「知ってる。…悪いけど君も一緒に来てほしい」

『なんで…!』




彼はそう言うと、私の返事も聞かずに私の手をとって、真斗くんの家がある方とは逆方向に走り出した




『あ、私ね苗字名前!名前でいいよ!』

「…名前」




きゅん…


あれ?なんだろう…、心臓がドクドクする。きっと走ってるからだよね。

子どもの頃はわからなかったけど、もしかしたらこの時から恋に落ちていたのかもしれない。だって可愛かったし…




「…はぁ、はぁ」

『…いきなり、走った…けど、っどうしたの?』

「つけられてたから逃げたんだ…。名前を巻き込んじゃった…ごめんね?」

『大丈夫!すごくスッキリした』

「ここは、どこ?」

『公園だよ?知らない?』

「…公園?」

『私たちみたいな子どもが遊ぶところ!…かな?』

「あれ、ゾウ?」

『あれはすべり台だよ、のぼる?』

「うん!」




私たちは、手を繋いだまま大きいゾウさんの滑り台をのぼった




『うは!たかーい!』

「楽しい…!」

『本当に?』

「僕、こんなに楽しいの初めてだよ!ありがとう名前!!」

『いえいえ!』




なんだろう。男の子なのに笑顔が私よりかわいいってどういう事なんだ…




「僕、名前と結婚したい」

『けっこん?』

「あ、でもお付き合いが先なのかな…」




真斗くんは、一体なんの話をしてるんだろう…
ちんぷんかんぷんだ




「僕、大きくなったら名前を迎えに行くから…絶対に」

『真斗くん…』




そういって、私の手の甲にキスをした




『ふぇ!?』

「それまで待ってもらうことになるけど…いい?」

『うん!私、真斗くんの事ずっと待つよ!』

「約束…」




私達は、お互いの小指を絡ませて指きりげんまんをした。




「真斗!」

「!?」

『?』




遠くの方から、オレンジ色の髪をした人がこちらを向いて大声で真斗くんの名前を呼んでいる




「じ、じゃあ僕、帰るね!バイバイ名前!」

『う、うん…バイバイ!』




「逃げてきた」って言ってたのに結局帰るんだ…。
真斗くんは私に背を向けて、オレンジの男の子と一緒に家へと帰って行った




『…私も帰ろう』












***



『なのに、全然迎えに来ないのはなぜ?』

「いちいち姉ちゃんに構ってらんないんだよ」

『ちぇ…。約束したのに…聖川様のバカヤロー!』







ピンポーン



「あ、姉ちゃん、きっとお母さんだと思うから出て」

『はいはーい』




家事をしている弟に命令され、玄関に向かう
(私より働き者なんです)
お母さん買い物から戻って来たのかな?両手塞がるほど買ったの?誰か連れて行きゃいいのに…




『お母さん、おかえりー』

「ただいま」

『…?』




…あれ?お母さんじゃない声がするんだけど。いつの間に男みたいな声出せるようになったの?
逆光でよく見えない…




「はは、残念だが、お母さんではない。君を迎えに来た。名前」

『え…』




嘘…だ、
もう一生私の前に現れてくれないと思ってたのに…




「俺がわかるか…?」

『ひ、ひじり…か…』

「真斗でよいのだぞ?」

『ま…、真斗くん!!』




私は、10年ぶりに会った真斗くんに、おもいっきり抱きついた。
あの時とは全く違う真斗くん。可愛かった顔も今は男の人の顔になってるし、話し方もだいぶ変わっている。体つきも、昔は私と同じくらいだったのに大きくなってる。

ただ、優しい手つきだけは変わってない




「待たせたな。しかし、名前は変わらんな…」

『あのね、ずっと!ずっと待ってたんだよ…!』

「俺とて、ずっと迎えに行きたかった。ただ小さい頃だったのでな、忘れられていたらどうしようと、怖くてなかなか迎えに行けなかった…」

『嬉しい…!覚えててくれたんだね』

「名前こそ…、覚えてくれていたのだな」




それはもうとても幸せで、真斗くんを手放したくないくらいの想いで強く優しく抱き締めた。
そしたら真斗くんも、抱き締め返してくれた




「姉ちゃん?」




















『ねぇ今でも雪は好き?』

「あぁ、雪は好きだ。じいが作った雪だるまを見ると名前をよく思い出した」

『ふふ、私もだよ』




真斗くんは私に顔を近づけてきた。
私は恥ずかしくなって俯いたけど、顔を優しく持ち上げられ、彼の唇と私の唇が優しく触れ合った。




「姉ちゃんの話って、マジだったんだ…」




雪だるま
(真斗くん!私の弟だよ!
(ほう、以後よろしく頼む
(え?あ、はい!
(えへへ
((俺、聖川財閥の人と話してる…!!


20130129

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