ふりまわされる



『真斗』

「…ん」

『まーさーと』

「ん…?」




誰かが俺を呼んでいる…?




『おーい!真斗ー』

「誰…、だ?」

『名前だよ』




名前…?
誰だ?名前…





名前?











「名前っ!?」

『おはよう真斗、元気にしてたかー?』

「あ、お、おはようございます名前さん」

『敬語はダメって言ったでしょー!!』

「しかし、年上ですし…」

『っつっても1つ上だけどね…。私はレンと同じじゃん』

「名前さんと神宮寺は同じじゃありません。一緒にしないでください」

『あ、はい…すいません』




俺のベッドに腰をかけている彼女は苗字名前。
苗字財閥の跡取り娘で、得意楽器は美風先輩と同じシンセらしい…




「しかし、朝から何故俺の部屋に…?」

『んー久々遊びに誘おうと来たらまだ真斗が寝てたのよ』

「あ、遊び…?」

『そうっ!ちょっと買い物するから付き合って!』

「はぁ!?」




自分でもビックリするくらい大きい声が出たと思う…
しかし久しぶりに会うというのに感動すらないのか…




『つまりデートね!…あれ?真斗?』

「み、見ないで下さい」

『顔赤くない?』

「そんな事はありませんっ!!着替えてきます!」

『は〜い!』




俺は隣の着替え室へと急いで入った。
はぁー、とても心臓に悪い…。俺が名前さんとデートなど…!!




「よし…!」




名前さんの隣を歩いても恥ずかしくないような服を着なければならんな…




「これは、迷うぞ…」










‐20分後‐



「すみません。大変お待たせしました………って、えぇ!?」




部屋に戻ると、俺のベットの上で寝息をたてながら寝ている名前さん。




「なな、な…!?」

『…ん……』




名前さんはあまりにも無防備すぎる!!男の部屋で眠るなど…!俺も一応男であって、これでも理性が…




「あの…、名前さん…」

『……ん?…』

「お、起きて下さい…」

『あ、…ごめん』




うう…
俺が言うのもアレだが…なんだか、とても可愛いではないか…

いや、年上の方に可愛いは失礼かもしれない…。だが仕草がいちいち可愛いのだからこれは仕方がない




『おぉー!かっこいいよ真斗ー!』

「ありがとうございます」

『さっ、行こうか!』




名前さんは笑顔で俺の手を取り、軽くスキップをしながら部屋を出た




「……」




俺の心臓は今日1日、無事に耐えられるのだろうか…

彼女はアプローチに鈍い。恋愛にはきっと運がなかったのだろう。すごく鈍いのだ











***



『わぁ…!可愛い!!』

「名前さんは昔からクマのぬいぐるみが大好きですね」

『うん!』




さっきからクマのぬいぐるみを見つけるたびに目が煌めく。その姿がとても可愛い




『あ、真斗!クレープっ!クレープ食べたい!』

「買いに行きましょう」

『は〜い!』




なかなかデートというのも楽しいものだ。
…名前さんとだから、余計に楽しく思う




「ねぇ…、あれ聖川真斗じゃない?」

「あ、本当だっ!超かっこいい!」

「隣の人だれ?」

「もしかして彼女!?うわぁ…、すっごい美人なんですけど…」




女子高生達がが俺達を見て話をしているのが聞こえる。ここは逃げたほうがいいのだろうか…




『真斗ー?』

「あ、すみません」




ん?誰も近寄って来ない…。という事は、きっと大丈夫なのだろう




『私はバナナかな〜。真斗は?』

「甘いモノはちょっと…」

『そっか…、じゃあ2人で一緒に食べよう?』

「へ!?」




またこの人は何を言い出すんだ…!
まったく、対応に困るのだが

どうしてこの人は本当に無防備なのだろうか。これではまるで襲ってくださいと言っているようなものだぞ!
さっきも言ったが俺も一応男であって、昔みたいに弟分ってわけにはいかない…


俺の事はちゃんと1人の男として見てくれているのだろうか…




『はい!買ってきましたよー!』

「す、すみません…!本来俺が買いに行くべきなのですが…!!」

『大丈夫!はい、あ〜んして?』

「は?」

『“あ〜ん”だよっ!真斗は私のクレープが食べれないって言うの?』

「わ、わかりました…」




仕方なく俺は口を開けて、名前さんの手の中にあるクレープを一口食べた




『真斗、…クリームついてるよ?』

「え、ここですか?」

『ここ』




ん?なんか、顔が近い気がするのだが…




『…ん、』

「……」




今、唇に柔らかいモノが当たったような…
一体何が…?
名前さんの唇が…?




『嘘、クリームなんてついてないよ』

「なっ…!?」

『あはは!可愛い』




やはり、俺の心臓はいくつあっても足らんぞ…!!名前さんは天然なのか小悪魔なのかわからん…!







ふりまわされる
(あ、またクリームついてるよ?
(も、もう大丈夫です!
(え?今度は本当だよ?
(………
(可愛い!


20130323

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