何も望まない



「ごめんってば、もうしないから大丈夫だよ」




毎回毎回このセリフを聞いている気がする。




『浮気だよ、浮気…』

「そんな事ないさ」

『彼女の前でキスって…』

「あれはレディの方から一方的にだからカウントはされないよ?」

『…本当に?』

「あぁ、俺は君だけだ名前。愛してる」




レンに強く後ろから抱き締められ、耳元で甘く囁かれる。ホント毎日毎日こんなやり取りをしている気がする。
レンが本気で私を好きになってくれる日は一体いつになるんだろう…。それを望んでしまったらレンには面倒だと嫌われてしまうのだろうか…
大好きな人に愛してると言われたら、体が熱くなっちゃうよ




『―っ!』

「かーわいい」

『も、もう!からかわないでよ!』

「ごめんごめん、反応が可愛いくて」

『もう…』




けど別に本気じゃなくてもいい。好きな人が隣にいるだけで幸せ。…って前はそう思ってたんだけど。私だけが大好きなんだって時々不安になった。勝手に嫉妬して、勝手に苦しんで…
本当に自分勝手な女だと思う…


お昼休み、レンは女の子達と昼ご飯へ出かけた。これも毎日の事




「なぁー!!聞いてみたかったんだけどさ、レンのどこがいいんだ?」

『翔ちゃん、それ聞いてどうするの?』

「や、気になっただけ…」

「…私も少々気になりますね」

『トキヤくんも?』

「はい」




仲のいい2人が私を囲むようにして集まる。普段は見せないような真面目な顔をしていた




『…顔』

「「は?」」

『嘘だよー、優しいところ!まぁ、私が女の子だからだろうけど。後、色々カッコいいよね!男前だし…』




理由を聞いた2人は呆れたようにため息をついた。
なんでため息つくのよー!!




「なんだ。もっと深い理由があんのかと思ってた…」

「浅い理由ですね」

『う、うるさいなぁ!いいでしょ別に!好きになるのに理由なんていらないもん!!』

「しっかしさ〜、レンと付き合うって聞いた時ビックリしたぜ。アイツいつも女子と一緒にいるけど気にならねぇの?」




さすが翔ちゃん。痛いところつくね
胸が痛くて張り裂けそうだよ、もう苦しい




『…気にしてない。って言ったら嘘になる』

「……」

「なぜ言わないのです?」

『レンにとって私はただのクラスメイトだし、遊びっていったら失礼かもしれないけど…彼は本気じゃないから、あまり深く入り込まないようにしてるの。それに、好きな人が近くにいるだけで幸せだから』

「…名前はいいのかよ、それで」




ホントおチビのくせに痛いところつくね。そりゃ嫌だよ?例え本気で好きだったとして、女の子達とあんな事されたら泣くよ?だからお遊びって思ってた方が楽なんだよ…




『うん!付き合えてるだけでも幸せなの!文句は言わない』

「ま、貴方がいいならそれでいいんじゃないですか」

『ありがとトキヤくん』

「まぁ、あまり幸せそうには見えませんけど」

『…え?』

「それは言える」




そんな事ない
ちゃんと幸せ、だよ?
目尻が熱くなってきた…




『…っ、』

「.…っ!?名前!?おま、」

「キ、キツく言い過ぎました」




泣いてる私に2人がオロオロしていると、レンが教室に帰ってきた。
急いで涙を拭く




「ただいま名前」

『今日は早いね!』

「まぁね、…ところで、おチビちゃんとイッチーと一緒に何話してたのかな?」

『他愛もない話だよ?』

「ふーん…」




少し機嫌が悪くなったレンは、さっきと同じように後ろから抱きついてきた。




「おい、レン…!」

「なっ…!!ここは学園であって…!」

『…?』

「あまり、ヤキモチ妬かせないでくれよ?」

『え?…レンはヤキモチ妬くの?』

「ダメ?」

『いや、ダメじゃないけど…』

「可愛い」

『いや、だからからかわないでよ』




なんでかな?抱き締めている彼の腕の力がいつもより強い気がする…。私、怒らせたかな…?
というか、ヤキモチを妬いてくれた事に驚いた




「だーから!俺達いるの忘れんな!!」

「まったく、貴方たちときたら…」

「ごめんごめん」




そう言うとレンは私の体からスッと離れた。
これで終わるのかと思ったら手首を掴まれた




「ちょっと名前を借りるけどいい?」

「あぁ、いいけど」

「好きにしたらいいじゃないですか」

『わわ…』




な、なに?別れ話とか…?
でもさっきヤキモチ妬かれたからそれはない?…あ、そうだ付き合う日に嫉妬したら別れる的なこと言われたんだった…。さっきの話聞かれてた…?


いつもより強い力で腕を引っ張られ、不安になりつつ屋上へと連れてこられた




「突然で悪いけど、話したい事があるから聞いてほしい」

『……』




いつもと違って真剣な顔、やっぱ別れ話…?




「…俺は名前の彼氏だ。でも俺はレディ達と遊んでいるし名前を困らせてる。君はこんな彼氏でいいのかい?…幸せなの?」

『し、幸せだよ!私はレンしかいない!…あ、違うよね、私が約束守れなくて嫉妬ばかりしてたから別れを言うんだよね、ごめんね、本当は面倒くさい女で。今まで隠しててごめんね』

「違う!!!」




彼は大きな声でそう叫ぶと、突然体が何かに包まれた。何かと思い、頭の中を整理すると抱きしめられてるのに気がついた。私の頬がレンの厚い胸板にあたる




『レ、レン…?』

「違うんだ!俺は、君が…名前が好きなんだ。もちろん軽い気持ちじゃない。本気で愛してる」

『え?あ、遊びじゃないの…?』

「いつも俺の行いが悪いからそう思われるのは仕方がないと思う。でもね嫉妬する君も、からかうと可愛い君、全部が大好きなんだ、1番に名前が好きだよ」

『だ、だって、キスだって…』

「それは、本当に悪いと思ってる」




なんか、遊びじゃないってわかったら安心してきちゃった…




『本当に、遊びじゃないの?』

「疑うね。大丈夫、ちゃんと名前を愛してる」

『…これからも嫉妬ばかりしちゃうよ?』

「あぁ」

『面倒くさいよ…?』

「それでも好きだ、名前」

『わ、私もレンが大好き…!!』

「キス、してもいい?」

『うん…!』




レンとのキスは、少ししょっぱい味がした。









20130319

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