一目惚れ



「ランラン!お客様だよんっ!!」




バタバタと荒々しく事務所の扉が開くと、そこにはテンションのウザい嶺二が満面の笑顔で立っていた。
めんどくせぇと思いつつも、読んでいた雑誌を閉じて一応聞いてみた




「あぁ゙?…俺にか?」

「うんうん!すっごくすっごく可愛い子!!」




"すっごく可愛い子"だけじゃわかんねぇだろうが、ただ知り合いにいねぇのは確かだな




「そんな奴、知り合いにいねぇ」

「えぇー!でも、黒崎蘭丸さんいますか?ってー!ランランが会わないなら僕が会っちゃおーかなー」

「…いや、俺が行く」




嶺二に行かせたらもっとめんどくせぇ事になるだろうと思って仕方なく俺が行く事にした…。一体何の用で来たんだ?もしかして、食い物とか…!?
部屋を出て廊下を歩く




「…まぁ、知らねぇ奴だったら、食い物もらってすぐ帰ろ」




暫くして外に出た。
何故か一度も見た事ねぇのに、その時はベンチに座ってる女が俺を訪ねて来たとわかった。
なんか、一瞬ビビっと来たんだよ




「…アンタか?」

『え?…あ、あなたが蘭丸ちゃんですか?』

「んなっ…!な、テメェ!なんでその呼び方っ!」

『あ、ご、ごめんなさい!!おじいちゃんとおばあちゃんがいつもそう呼んでいて…!』




あぁ?おじいちゃんとおばあちゃんが「蘭丸ちゃん」って呼んでるだって…?
それって…、まさか…




「キッチンパセリ…か?」

『わかりますか!?私は2人の孫なんです!』

「ま、孫!?」




あの、じじぃとばばぁに孫がいたのか…!?
俺ァ初耳だぞ!?




『今日は…、お礼を言いに来ました』

「お礼…?」

『柄の悪い人を追っ払ったと聞きました。おじいちゃんとおばあちゃんを守ってくれて、ありがとうございます』

「あれは、俺じゃなくて後輩の奴が…」

『後輩さんも守ってくれたんですか?えっと…、その人にもお礼を言ってもらってもいいですか?』

「あぁ…」

『ありがとうございます!それでは、帰りますね』




本当にお礼だけを言うと、俺に背を向けて歩きだす女。
そーいや名前とか聞いてねぇな…、っつか暗いのに女1人で帰らせるわけにはいかねぇよな…?




「おい、待ちやがれ」

『はい?』

「送ってく」

『え?』

「もう遅ぇし…、女が1人歩くのは危ねぇからな。それに、あの店に送っていけばいいんだろ?」

『なんか、すみません…』

「なんで?」

『お礼だけしに来たのに、送ってくださるなんて…蘭丸さんは、お優しいんですね』

「―っ!」




な、なんだ!?今日初めて会ったばかりなのに…なんで、こんなに胸がドキドキしてんだ…!?
落ち着けっ!俺の心臓落ち着けっ!!




「う、上着取ってくる」

『はい、お待ちしてます』




俺は上着を取りに急いで事務所に戻った。
ロッカーから上着を取って彼女の所まで戻ろうとした途中、廊下で嶺二とバッタリ会ってしまった。
うわ、めんどくせぇ…




「あれ?ランラン上着持ってどこ行くのー?」

「…どこでもいいだろ」

「あららら…?もしかして、あの女の子を送るんですか〜?」




にやりと笑う嶺二。
はぁ、マジで気持ち悪い




「うるせぇ」

「あ、図星だ!」

「うるせぇなっ!俺はもう行くぞ!!彼女を待たせてんだよ!!」

「あ、うん…」




まったく…!アイツのせいでちょっと待たせちまったじゃねぇか!!




「す、すまねぇ…」

『大丈夫です、送ってもらう身ですから』

「……」




やっぱ何かおかしい…。
こいつに会うと心臓があり得ないほど脈をうっている気がする。

とりあえず店まで結構距離あるが、歩きながら彼女と話をする




『蘭丸さんはアイドル、なんですね』

「あぁ」

『お似合いです』

「はぁ?マジで?」

『蘭丸さんは、人を笑顔にする事が出来るんです』

「そんな事ねぇ、むしろ怖がられてる」

『そんな事ないですよ!私は今笑顔にされてますもんっ!!今、すっごく楽しいです!』

「お、おう…」




これはきっと恋。
俺に一目惚れなんて絶対にあるわけねぇと思ってたが…、しかもよりによってじじぃとばばぁの孫なんて…。
初恋か、ちょっくら頑張ってみっかな…




「…お前、名前は?」

『苗字名前です!』







一目惚れ
(名前、これ…
(なんの番号ですか?
(携帯
(わ〜!ありがとうございます
(……


20130317

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