恋のきゅーぴっと




『あ』




授業中、消しゴムを使おうと手を伸ばしたら、誤って消しゴムが机から落ちてしまった。コロコロと、前の方に転がっていく私の消しゴム

しかも音也くんの足に当たっちゃった!!
なんでよりよって音也くんなの!?
消しゴムは恋のキューピット的なヤツなのか!!




「?」




足に違和感を感じた音也くんは、私が落とした消しゴムを拾うと周りをキョロキョロし始めた


そして、彼と目が合う




『っ…』




ドキンと私の心臓が跳ねる。
暫くして、音也くんが「これ君の?」と目で聞いてきたので、私は必死にコクコクと首を縦に振った




「……」




私のだとわかった音也くんは、消しゴムを返さず、そのまま前を向いてしまった




『(音也くん、消しゴム返してください…)』




私は、その授業で消しゴムを使えませんでした…
(大変だったよ、もう)

授業終了のチャイムが鳴り号令が終わったと同時に、音也くんが私の席まで歩いてきた




「苗字さん、はい!消しゴム」

『あ、ありがとう!』




ヤバイです…。その太陽のような笑顔に私、殺されます!!




「ごめんね、本当は授業中に返したかったけど、ちょっと距離あったからさ…」

『あ、全然気にしないで!拾ってくれただけでも嬉しいから』

「……」

『?』

「あの、さ…。苗字さんって作曲コースだよね?」

『え?うん…』




そう、私はこう見えて作曲家になりたいのです!!
けど…突然どうしたんだろ




「あの、パートナー…、っている?」

『…いない』

「そうなの!?」

『うん』




いや、最初の頃はいたんだけどね…。相手が怪我して、しばらく学校休みだったらしいんだけど…、どうなんだろ。
ずいぶん連絡がこない。昨日パートナーを解消されたし




「じゃあ、俺とパートナーにならない!?俺もいないんだ!」

『え…、えぇぇえ!?い、いいの!?』

「あたり前じゃん!」

『あ、ありがとう…!』




嘘みたいだ…、音也くんが私のパートナーになってくれるなんて…!ホント夢みたい!!生きてて良かった!!


その日から、私は音也くんと一緒に過ごすようになった。あんなに遠くにいた人が、今は私の隣にいてくれてる。こんなに幸せな事があるのだろうか…




「名前ちゃーん!」

『あ、音也くん!放課後にどうしたの?』




あの日から数日が経って、互いに名前で呼び合う仲になりました!




「歌詞書けたよ!気持ちを込めて書いたんだ〜」

『わぁ、本当に!?ありがとうっ!!』

「あ、あとあの時、名前ちゃんが落とした消しゴムって…持ってる…?」

『え?うん、あるよ!』

「…見た?」

『へ?何を…?』

「なな、なんでもないよ!!見てないならいいんだ!気にしないで!!」




いつも元気100倍の音也くんが顔を真っ赤に染めながらあたふたしてる…。
あの消しゴムに何か書いてあったりするのかな?
筆箱から消しゴムを取り出しカバーを外そうとした




「!」




けど、それに気付いた音也くんがカバーを外そうとする私の手を強く握った。




『!?』

「だ、だめだめだめ!!今は見ちゃだめっ!!」

『あ、うん…!』




音也くんの手、大きくて温かいな…、この頃徹夜だったからちょっと眠くなりそう…




「名前ちゃん、眠い?」

『す、少し…』

「今は放課後だし、俺の肩使ってよ。あ、今イス持ってくるね!」




なんて優しい人なんだ…!こんな私の為にそこまで…




「はい!肩使って!」

『ありがとう!』




ちょっと恥ずかしかったけど、音也くんの笑顔には勝てなくて、遠慮せず使わせてもらいました。
意識が遠くなる寸前のところで音也くんが、何か言っていたような気がした














『…んっ、』

「あ、起きた?」




何時間寝ていたのだろう、オレンジ色の空だったのが辺りはもう真っ暗で、驚いた。教室も電気が付いてなくて真っ暗。寝る前は隣にいた音也くんが今はどこにいるかわからない。
帰っちゃった…?




『お、音也くん…?』

「名前ちゃん?」

『!?…音也くん、どこにいるの?』

「名前ちゃん、俺はここだよ」




私のちょっとした異変に気付いた音也くんは、私のところに駆け寄ってくると優しく抱き締めてくれた。
彼の心臓の音が聞こえると安心する。




『音也くん…』

「ここだよ、ちゃんと名前ちゃんの近くにいるから…ね?」

『うん…』




昔から暗闇は好きじゃない…。
ブラックホールみたいで、私の大切なモノとか吸い込まれそうでなんとなく怖い。
けど…、音也くんのぬくもりが私を包んでくれていたから今はそんなに怖いと思わなかった




「……」

『……』




沈黙が続く中、しばらく音也くんは私を優しく抱き締めながら、頭を撫でてくれた。


と、まぁ昨日は音也くんに結構迷惑をかけちゃった…
というか、暗闇だったからってなんて恥ずかしい事したんだろう自分!穴があったら入りたい!そのまま出たくない!!!それくらい思い出すだけで恥ずかしい…




『あ』




昨日の事を考えていたら、また授業中に消しゴムを机から落としてしまった。ただ今回は音也くんの所まで行かなかった




『…んしょ』




私は、消しゴムを拾うとふと思い出した。
そういえば音也くんはこの消しゴムを気にしてたみたいだった…。
一体何があるんだろう…

とりあえず、カバーを外す事にした




『!』




え、嘘…。
消しゴムには音也くんの字で「好きだよ」の一言が書いてあった。

音也くんが…?
わ、私を?




『(そ、そんなわけないよね…?)』




消しゴムから顔を上げて、音也くんを見よとしたら彼もこちらを見ていてあの時みたいに目が合った。
あの時と同じように私の心臓が激しく動く


音也くんが消しゴムのカバーを外してあるところに目をやり、顔を赤らめた。私もそれにつられて赤くなる。
けど、すぐにいつも以上の嬉しそうな笑顔が返ってきた




『!?』







恋のきゅーぴっと
後で、言わなきゃ…ちゃんと、私も好きだよって…


20130317

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