おめでとう





いつもの朝。いつもの昼

変わったところといえば、朝からみんなが俺に“おめでとう”って言ってくる事だ







「なんかあったっけ?」

『そーごぉぉお!!』




ドタドタと屯所の廊下を走り、こちらに向かってくる俺の幼なじみ名前




「なんでィ、痴漢にでもあったんですかィ?」

『あってねぇよ。違くてっ!私さ、今日1日何でも言う事聞いてあげる!』

「…いきなりなんでィ。マジで?」

『マジで!』

「ふ〜ん…、じゃあ団子おごってくだせぇ」

『いーよ!』




なんだか今日はやけにコイツが優しいな。
まぁいいや、今日1日思う存分たっぷりといじめてやりまさァ…









***



『総悟!なんのお団子?』

「みたらし30本」

『さ、30本!?』

「なんでィ。なんでも言う事聞くってあれは嘘だったんですかィ?」




ほーら。名前の困ってる顔がたまりませんぜ。
昔からこの困り顔が大好物なんでさァ




『…う、嘘じゃないし!いいよ30本ね!』

「…マジで?」




一体何があった…?









***



「名前、ちょっくらトイレに行ってくらァ」

『ん、行ってらっしゃい』




公園の男子トイレに入る俺。
いつもと態度が違う名前に違和感を覚え、近くにいるのが少し嫌になった。




「調子狂うぜ。まさか本当になんでも聞いてくれるとはねィ…」




甘味屋でみたらし30本

山崎のためのミントンラケット

土方専用の業務用マヨネーズ

近藤さんの大量のバナナ

これも買ってくれた。どっからそんなに金が出てくるんですかねィ…




「ふぅー…」




用を済まし、トイレから出ると名前がニコニコして俺を待っていた。気持ち悪ィ…




『総悟!電車代あげるから、先に帰ってて!』

「…待て名前。さっきからなんでィ。俺にいいように使われてムカつかないんですかィ?だいたい少しは怒らねぇと一生騙されて生きてくぜ」

『だ、騙す…?』

「言っとくけどな、今日買った物は俺の為じゃねぇ、真選組の皆の欲しいモノでィ」

『そ、総悟が欲しかった物じゃないの…?』

「俺みたらし以外いらねー」




すると突然名前は俯き、体が小刻みに震え出した




『……か…』

「は?」

『バカバカバカバカ!!これじゃ何の為に今日までお金を貯めたのかわからないじゃん!!なんで、なんでそんな事すんの!?』

「名前…?」




ちょっとしたイタズラのつもりだった。
名前の困った顔が見たかった…、ただそれだけ。いつもの日常なのに、なぜそんなに怒る?
名前を見ると、瞳には涙がたまっていた




『…先、帰ってて』

「おぅ…」




名前から電車代を貰った俺は、心がモヤモヤしたまま真選組屯所に戻った。









***



「沖田さんお帰りなさい」

「………」

「あれ?名前ちゃんは?」

「…置いてきた」

「はぁ、そうですか…」

「俺ァ部屋に戻る。何かあったら呼んでくだせぇ」

「はい!」




はぁ、なんでイタズラしようと思ったんだよ…、俺のバカヤロー…












‐その頃、名前は‐




『ケーキ買ったし、真選組に帰るか…』




ケーキ屋さんからケーキを受け取り、歩きだそうとした時、周りに血の匂いが漂った




『………』

「そこの姉ちゃん。いいもん持ってんなぁ、俺たちにくれよ」

『何あんたら…』

「こんな遅くに出歩くとあぶないぜぇ」

『さようなら』

「待ちな!」




走りだそうとしたら、見知らぬ男にケーキを持っている方の腕を捕まれた




「ケーキ、置いてけ」

『はぁ!?無理だから!!これだけは絶対に無理ィィィイ!!』

「いいから!!」

『やだ…!!』







――――スルッ



――――グシャ



『「あ」』

「わ、悪い…」

『…もぉぉぉお!!なんで皆私を騙したり邪魔したりすんの!嫌い!!皆嫌い!!』

「ご、ごめんよお嬢さん」

『…私も騒いですいません』









***



『………』

「おじょーさん。夜遅く公園にいると危ねぇよ」




夜の8時半、公園のベンチに座っていると、後ろから聞き覚えのある声がしたので振り返る




『銀さん…』

「どうした?真選組が嫌になったか?」




彼は万事屋の坂田銀時さん。私のお兄さん的な存在の人

銀さんは私の隣に腰かける




『あのね…今日、総悟の誕生日なの』

「へー、そいで?」

『頑張って、お金貯めてたのに買ったものは全部真選組の人達のだったり、さっきケーキ買ったらおじさんに絡まれてケーキぐちゃぐちゃになっちゃったし…、私って運が悪いんだね』

「うん。名前は運が悪い方だよ」

『えっ?そうなの?』

「まぁ…、ケーキなら俺が作ってやるけど?」

『ほ、本当に!?銀さんありがとう!!』

「おう、そうと決まれば万事屋に帰るか!」

『うん!』




こうして、私はケーキ作りの為に万事屋へと向かった



prev next

- back -


[prev] | [next]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -