2人のマグカップ



「なーなー、名前」

『ん?なんですか?』




学校にて、職員室を通り過ぎようとした時だった。
ちょうど出てきたのは、私の担任…銀八先生で、呼び止められた。




「今日空いてる?」

『まぁ…』

「デートしたい?」

『え?うん、したい!えっ!?いきなりどうしたの!?』

「声がでけぇよ!」




実は、担任でもあり、私の彼氏でもあります。
銀八先生が私をデートに誘う事って全くないから、今すごく嬉しい。
でもどうして突然…




「…俺、今日誕生日だからプレゼントよろしく」

『たん、じょうび?』

「うわー、知らなかったの?うわー」

『ご、ごめん!』

「…まぁいいけど。よし、じゃあ俺の仕事が終わるまで教室で待ってて」

『わかったー』

「じゃあな」

『また後でねー!』




銀八先生がいれば他は何もいらない。
それくらい好き。…いや、愛してるって言うべきかな。
今日が楽しみだなぁ。あ、プレゼント考えないと…









***



『…ふぁ…、遅い』




授業が全部終わり、HRも終わって、みんなが帰った後も1人で教室にずっといる。
外は、オレンジ色の空が一面に広がっていて綺麗だった。
…それにしても遅い




「…っ!はぁ、はぁ…。悪い、遅くなった…」

『やっと来た!…あれ?今日はスーツなの?』

「…ふぅ、ダメなの?」

『いや、そんな事は言ってないけど。珍しいなーって…』

「うっせ」




照れた先生が、私の腕を掴んで引っ張ってきた。
そのまま教室を出て、廊下を歩き、下駄箱を通って、学校を出た。




『先生、速いよー』

「もう学校出たから“先生”は禁止な」

『…はーい』

「じゃあどこ行きたい?」

『…水族館行きたい』

「…なんで?」

『なんとなく…』




水族館ってよくない?
2人でまだ行った事なかったし…




「わかった、じゃあ近い所でいいな」

『うん』




と、いうわけで…
電車に乗って水族館へと向かいました。









***



「大人1人と高校生1人でお願い」

「…はい」




受付の人が私達を交互に見てきた。
まぁ、スーツと制服は目立つよね




『えっと、750円…』

「俺出すからいい」

『え?でも…』

「その代わり、プレゼント代にまわしといて」

『…うん』

「よし、行くか」


















『ねぇ銀八!イルカだよ』

「本当だ、可愛い」

『イルカ可愛い…』

「あっちには鮫がいるって」

『鮫怖くない?』

「襲ってこねぇからww」

『それくらいわかるよ!』




イルカより鮫に興味がある先生は、行きたそうにウズウズしている。
か、可愛い…




『じゃあ、そろそろ鮫の所に行く?』

「おう!行くっ!」

『行こう先生』

「…“先生”っつった。禁止って言ったのに」

『え…?き、気づかなかった!癖なのかも…!!』

「許さねぇよ」

『待っ……んっ!』




先生のこんな所がまだ全然慣れない。
“禁止”って言われた事をすると、キスしてくる。
これが長くて困るんです




『…っ、はぁ…。人いたらどうすんの!?』

「そんなの薄暗くてわかんないだろ」

『でも…!』

「…悪かったよ。ごめん」




そう言った先生は、私の後頭部に手をやると、先生の胸板に抱き寄せられた。
嬉しいけど、これもダメなんだって…









***



『水族館楽しかったー!』

「そうだね。…次どうする」

『…プレゼント選ぶ』

「OKっ」




水族館を出て、近くの雑貨屋さんへと来た。
何を買おうかな…。どうせなら、ずっと使えるモノがいいよね
煙草吸うから灰皿とか?
マグカップとか?
ネックレスとか?




『…銀八は何か欲しいモノある?』

「名前からのプレゼントならなんでも」

『………』




1番迷うじゃない。
じゃあ1番使ってもらえるマグカップにしようかな




『…決まった!この水色のマグカップにする』

「あんがと」

『…えへへ』




私はそのマグカップを持って、レジへと向かった。
店員さんにプレゼント包装を頼むと、綺麗にマグカップを包んでくれた。




『お待たせ!』

「ん、じゃあそろそろ帰るか…」

『…うん』

「…公園行って、少し話してから帰るか?」

『う、うん!』

「名前ってわかりやすい奴だな、顔に出てる」

『………』




電車に乗って地元に戻った私達は、駅を出て近くの公園へと寄った。
私が先にベンチに座ると、隣に先生が座ってきた。
少し寒いんだって




『銀八先生、好き』

「…知ってる。つか“先生”禁止だっつの」

『愛してるの』

「………」

『この気持ちね、毎日毎日大きくなっていくの。このままじゃ、いつか破裂しちゃうくらい…』

「あんがと。俺も大人のくせして、名前の前だと我慢できないんだわ。愛してるぞコノヤロー」

『…はいっ!誕生日おめでとう銀八!』




私はマグカップが入っている紙袋を先生に向けて突き出した。
すると、先生もカバンからラッピングされた箱を出して、私に向けた




『?』

「俺からもプレゼント」

『な、なんで!?』

「と、とりあえず開けて…」




私は紙袋をベンチに置いて、先生から箱を貰い丁寧に包み紙を剥がしていく。
箱を開けると、中に入っていたのは先生の為に買ったマグカップの色違いだった




『赤い…』

「ペアだな」

『…最初からペアがいいって言えばいいのに』

「だって言ったら自分のモノまで買うだろ?それが嫌だから言わなかったの」

『…ありがとう』

「俺もありがと」

『誕生日おめでとう!』

「ありがとう」

『マグカップ大切に毎日使うからっ!!』

「俺も大切に毎日使う。いつかテーブルに一緒に置けたらいいな」

『…プ、プロポーズ?』

「ちょっと違うな。…プロポーズは名前が卒業してからだっ!」





2人のマグカップ
(名前ー、宿題やってきたかー?
(…すいません先生、忘れました
(なんでやってこないー
(マ、マグカップに見惚れてて…
(…マジでか

((((((((くそリア充めっ!



20131010

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