自分を犠牲にしないで



「ねぇ、姉ちゃん。可愛いね、いくらで?」

『やめて下さい。早く店から出ていけ変態』

「チッ、こりゃ性格が可愛くねぇや…」







――――バキッ!



『テメェーに言われる筋合いなんてないのよ?死ぬかコノヤロー!』

「す、すいませんっ!!」




最初に言っておくけど、ここは妙ちゃんが働いてるようなキャバクラじゃないし、私は普通に甘味屋で働いているだけ。
昔もそうだけど、最近はやたらと私の体目当てに甘味屋にくる糞野郎がいる。
本当に私そういうの興味ないんで、やめていただきたい。毎日毎日鉄拳食らわせてんのに…、懲りない奴がいるもんだよ。本当




『…ふぅ』

「名前〜」

『あ、銀さんだっ!』




そんな日々を送ってもストレスはあまりたまらない。なぜなら、私の彼氏である坂田銀時がお店に遊びに来てくれるからです!




「…何、今日も?」

『うん…』

「別に無理して働かなくたっていいんだぞ?」

『ありがと』

「俺は本気で言ってるんですけどー?」




私の心配をしてくれる優しい人。
みんながマダオって呼んでる意味があまりわからないんだよね。




「そうだ、今日俺の家に泊まっていけよ」

『え?神楽ちゃんは?』

「…新八の所に泊まるって」

『………』




なんだよ…。
可愛いぞコンチクショー!あぁ、銀さんの照れ顔見れた私は今日頑張れる!
めちゃめちゃ頑張れる気がするんですけど!!




『それじゃ、もう少しで上がるから待ってて!』

「おぅ」




私は銀さんに、外で待っているよう言って職場へと戻った









***



『銀さんお待たせー!』

「お疲れさん、帰る前にどっか寄るか?」

『大丈夫!すぐに帰ろう!』

「お、おう…」




空は綺麗なオレンジ色の夕焼け。
銀さんと楽しい話をしながら万事屋へと向かった。…はずなんだけど、何かに尾行されてる気がするの。銀さんも気づいてるみたい。




『…銀さん』

「ったく、2人の楽しい時間を邪魔すんじゃねぇよ…」




銀さんがそういうと、ゾロゾロと柄の悪い男達が集まってきた。あの先頭に立ってる男、昼間に来た奴…!
みんな手に金属バットを持っている




「兄ちゃん、その子の彼氏か?」

「そうですけど?」

「やめた方がいいぜその女、性格ブスだからな。つーわけで、彼氏さんは離れた方がいいぜ?俺等はその女を痛めつけるからよ」

「それを聞いて、彼女から離れる馬鹿がどこにいんだよ」

『銀さんでも…!』

「大丈夫、俺も戦うさ」

『けど…!』

「…名前をここで見捨てたら、俺死ぬまで後悔するぜ?」

「お前ら、やれっ!!」

『っ!!』

「名前伏せてろ!!!」



銀さんに言われた通り、その場に足を抱えながら座り込んだ。
すると、頭上から金属バットと木刀が交わる音が聞こえる




「うぉぉぉぉぉお!!!」

『…い゙っ!!』

「名前っ!?」

「背中がら空きだぜ?」




後ろから、背中を金属バットで勢いよく叩いてきた。痛い

痛すぎて涙が出てくる




「テメェ、普通女に手ぇ出すか…?」

「うるせぇ」

「名前っ!」

『銀さん…』




銀さんが地面に膝をついて、私を全身包み込むように抱き締めてきた。
そんな事したら、銀さんが代わりに…!!




『嫌だ、銀さん!!』

「ぐっ…!!」

『やだっ!銀さん!!!』

「うぐっ…!!」

『銀さん!!やめて!!!』

「こんなの、どうって事、ねぇよっ…!!」

『嫌だ!私なんかの為に体なんて張らないでよ…!!』

「い゙っで…!!」




いつもそうだ。
私が危険な状況にいる時なんて、自分を犠牲にしてでも助けにきてくれた。
嬉しいけど…、私は犠牲にしてほしくないんだよ




「ぐあっ…!!」

『いや…、銀さん!!』

「な、なんだよこいつ…!」

「もう逃げようぜ…?こいつに恨みねぇし…」

「そ、そうだな!逃げるぞっ!!!」




男達は、銀さんを金属バットで叩いた後、その場を去って行った。
銀さんは安心したのか、私の方に倒れてくる。もちろん私は支えきれなくて、一緒に倒れてしまった。




「………」

『銀さん、死なないで…』

「…お前が、死ぬまで…死なねぇよ…」




銀さんはそっと目を閉じた









***



「…ん」

『あ、起きた…?』

「…え?名前!?−っ!いってぇ…!!」

『あ、安静にしてて?』




驚くのも無理ないか…。
起きた時、横に人がいたら誰だって驚くよね。
ここは万事屋銀ちゃんの寝室にある布団の中。
1つの布団に2人で入ってる




「…大丈夫か?」

『私は大丈夫。銀さんは?』

「俺も平気。でも、さすがに金属バットは…、な」

『…ごめんなさい…』




すると銀さんは、私の方を向いて優しく抱き締めてくれた




「名前のせいじゃねぇから、謝る必要ねぇぞ」

『…うん』

「そんな事より、甘味屋なんてもうやめちまえよ」

『…言われなくてもやめましたよー』

「………」

『………』




私は、銀さんの背中に腕を回し、強く抱き締めると、彼の胸板におでこをくっつけて泣いた。




『ぎ、んさん…。助けて、くれたのは嬉しい、けどね…、自分を、犠牲にしてほしくない、の…』

「………」

『銀さん、死ぬんじゃ、ないかって、こ、怖かった…』

「…ごめんな」

『うっく…!!』




しばらく銀さんの腕の中で子供のようにわんわん泣いた。
その間、銀さんは私の頭を優しく何度も撫でてくれたから気持ちが安心した。























「っつか思ったら名前と布団一緒って…」

『う〜ん?』

「なんかやべぇ…」

『銀さんだったらいいよ?』

「こら、そんな可愛い事言ってどうなっても知らねぇからな!」

『ふふっ』





自分を犠牲にしないで
(もうダメだよ?
(…でも俺、名前に死なれたら嫌だし
(でも…
(大丈夫、名前から離れたりしねぇから
(うん…



20130716

- back -


[prev] | [next]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -