最高の人生




『小太郎ー!誕生日おめでとー!』

「………」




ん?お祝いしてあげてるのに無反応なの?
散歩中に私がいきなり目の前に現れたから?




「貴様、高杉の回し者の分際で俺の前に現われるな」




あらら冷たいんですね。
まぁ…、たしかに小太郎と会ったのは今が初めてだけど、私は前から知ってるし、好きなんだ。
一目惚れってやつだよ。


…あれ?つかなんで私が晋助様の仲間ってわかったんだろう…。まぁいいや




『違うもん。晋助様には内緒で会いに来たんだもん』

「……っ」

『わざわざ誕生日に抜け出したんだよ。褒めてほしいくらいだよ?』

「……」




本当に小太郎って素直じゃないよねー…。
『ありがとう』すら言ってくれないし




『なんとか言ってよ』

「ん、…あぁ、すまん」




なぜ謝るっ!何ボーッとしてんのよ。1つ老けたんだよ?悲しむか喜ぶかどちらかにして。今のアンタは“無”じゃん




『………』

「………」

『ねぇ』

「…ん?」

『こんな夜遅くに街で会いたくなかった?やっぱり迷惑…?』

「…いや」




なにその間。絶対に会いたくなかったでしょ。
わかるんだからね!




『じゃあ、もういい。バイバイ。もう現れないようにするから…』

「…あ、」




なんなの!?引き止めるんだったらちゃんと引き止めて!!まだ名前すら呼ばれてないんだよ!?
あ、知らないんだっけ?


きっと晋助様の回し者だから相手にされないんだ…
普通の女の子だったら会話のキャッチボールができてるはずなのに…、普通が一番なの!?




「あのな…」

「御用改めである!桂小太郎と苗字名前だな!!」




うわわわ…!!このタイミングで真選組登場!?




「カスどもに捕まるような俺ではない!!」

『(やばっ…!!逃げなきゃ…!!)』




ここで捕まったらシャレにならない。晋助様が危ない!
(小太郎も危ないけど…)
全力疾走してやるっ!!







―――ガシッ!



『…あれ?』

「副長ー!!高杉の回し者、苗字名前を捕まえましたー!!」

「よくやった山崎!」




さ、最悪だ…!
まさかこんな地味なヤツに捕まるなんて…!
晋助様に嫌われたくない




『いや…、離してっ!!』

「あ、暴れるなっ!!!」




暴れたせいで、口を押さえられ、腕も後ろで組まされた。痛い!




『(私は…ただ、小太郎の誕生日を祝って喜んでほしかっただけなのに…!)』




祝っても喜んでもらえず、ましてや真選組に捕まってしまうなんて…




『ふぅ……、う…』

「泣いたって無駄だよ」




ひどいよ…。みんなひどい

私、もう晋助様だけに愛をささぐ!みんな嫌いだ!!それから晋助様ごめんなさい!捕まってしまいました…!




「………」

「ん?急に止まってどうした桂…」

「………」

『ん…?』

「けむり玉だぁぁあ!!」







―――ボワン!



『!?』

「うわっ!…くそ!!周りが見えねぇ…!お前ら気をつけろ!」

「うがっ!!」

『え?』

「どうした山崎!!」




突然地味なヤツが、ずり落ちた。おかげで拘束が解かれたけど…




『?』

「名前…、行くぞ」

『こ、小太郎?なんで…』

「話は後だ!」




小太郎は私の手をとり、真選組にバレないように走りだした。
小太郎の大きな手のぬくもりが温かくて、すごく恥ずかしかった









***



『はぁ、はぁ…』

「ふぅ…、何とか逃げきれたな…」

『あ、ありがとう…』

「いや…」




やっぱり小太郎を嫌いになんてなれないよ。
助けてくれたし…、ますます好きになっちゃった…。
でも、小太郎は私の事が好きじゃないし…




「はぁ…」

『ごめんね小太郎。誕生日にわざわざ現れちゃって…。私が高杉の回し者だから嫌なんだよね?』

「ちがっ…」

『いいの!…もう会わないって決めたから…』




そうだよ。見てるだけだったらいいって天からのお告げなんだ。これは…




『誕生日、おめでとう』

「…っ」




これだけ伝えて帰ろう。晋助様の所に…帰る!




「…ま、待て!!」







――――ギュッ



『え…?』




突然、小太郎は後ろから私を抱き締めてきた。
もちろん、私の思考がいったん停止する




『な、なにして…』

「俺は、前に1度…、名前に会った事がある」

『…は?』

「いや…、正確には見た事があると言うべきか」




小太郎が私の耳元でぶつぶつと何かを喋り始めた。
ちょっと、頭が追いつかないんですけど…




「…高杉に見合いをしてみないか?と言われた」

『へ!?』




晋助様ってそんな事までするの?そんなの聞いてないよ!っていうか見合い!?




「その時に、出された写真に写っていたのが…、君だ、名前…」

『え…』

「最初は断った。高杉の回し者だし会った事もなかったんでな」

『まぁ…、そうだよね』

「だが貴様を観察してて、笑顔が可愛く、よく笑う。本当はいい子なのだろうと見て思った」

『………』




うぇ!?じ、じゃあ…
ずっと私を見てたって、事だよね…?




「だから…、名前となら見合い、してもいいぞ…」

『小太郎…!!』







――――ギュッ



私も小太郎の方を向き、抱き締める




『私ね、小太郎が好きなの!今日は小太郎の誕生日だから喜んでほしくて…!』

「そうか…、悪かったな」

『今幸せだからいい!!』

「そうか。俺も人生で今日が一番いい誕生日だった。ありがとう」





最高の人生
こうして、私は小太郎と仲の良い夫婦になることができました!



20130626

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