貴方のテブクロ



「名前ちゃん!こんな所でどうしたの?」

『し、新八くん!?』




僕はスーパーで買い物をしていた。神楽ちゃんがあれだけ食べていればすぐに食料がなくなるわけで…。
ある程度買い、万事屋に戻ったのだけど…玄関に名前ちゃんが立っていた。


名前ちゃんは、僕の友達であり、想い人でもある。
よくスーパーで会って仲良くなった。今日は何がセールなのかとかよく教えてくれる。名前ちゃんのおかげで食料が安く買えるんだ




『え?ここ、新八くんの家なの…?』

「はは、ここは僕の仕事場なんだ」

『そっか…。あの、坂田銀時さんはいるかな…?』

「いると思うけど…」







―――ガラガラ



「銀さーん!」

「あぁ゙?」




銀さんがいるか確かめようと名前を呼んでみると、不機嫌な返事が返ってきた




「いるみたい。あがってあがって!」

『ありがと、失礼します!』




名前ちゃんを居間まで連れていけば、案の定ぐーたら男がソファーで寝ていた




「ほら銀さん起きてください!お客さんですよ」

「んん?」

「ごめんね名前ちゃん、ちょっとここに座ってて?お茶持ってくる」

『あ、ありがとう!』




はぁ…、銀さんっていっつもああだよね…。今日くらいビシッとしてほしかったよ




「はい、お茶」

『ありがとう』




僕は名前ちゃんの隣に座る




「…今日はどういった依頼で?」

『えっと…』

「…新八、お前ちょっと散歩いけ」

「は?」

「この子、お前がいると喋りにくいみたいだし?」

「そんな…」

『その…、新八くんお願いします!!』




名前ちゃんに頭を下げられたら断るわけにはいかないよね…




「わかりました…」

「ん」

『ごめんね…』

「気にしなくていいよ」




そうして、僕は外へと出かけていった。
…のはいいとして、どこで暇潰ししようかな…。何時間くらい外出てればいいの?ちゃんと聞いてくれば良かった…




「うーん…、久々に甘味屋にでも行って時間つぶそう」









***



「はぁ…2時間もいるけど、まだなのかな?」




あれから2時間。連絡なしって事はまだ話をしている途中なのだろうか…




『新八くん!』

「あ、名前ちゃん!」




僕の前にやっと名前ちゃんが現れた。長かったな…




「ねぇ、銀さんと何話してたの?」

『え、えっと…』

「僕に言えないこと…?」

『え?…うん、まぁ…』

「そっか…」

『あの、もう帰っても大丈夫だから!…ありがとね』

「え?」




僕、なんかお礼される事したかな?
名前ちゃんは僕にお礼を言うと帰ってしまった




「…?」




とりあえず、万事屋に帰る事にした僕。


















―――ガラガラ



「銀さーん」

「新八…」




銀さんは僕の顔を見ると、驚いた表情をしていた




「な、なんですか…?」

「ぱっつぁんよ…、お前は幸せもんだな」




そういった銀さんは僕の頭を撫でまわした。髪がぐちゃぐちゃになるくらいに…




「なんの話ですか!…ってかやめろ!!」

「お前なら大丈夫だ!俺が認めた唯一の舎弟だからなっ」

「意味がわかりません!」




今日はやけに優しいのは何故だろう。いつもの銀さんは“ツンツン”してて、シリアスなところで“デレ”を出す人なのに…。
今日はホントに優しいな…




「ホントなんですか…」

「え?まぁ、いい子を友達にもったなって」

「?」




いい子って名前ちゃんの事か?確かにあの子はいい子だよ。僕にいろいろ教えてくれるし…

だから何だっていうんだ…









***



『新八くん!』

「名前ちゃん!?」




あの日から2週間も会えてなかったから、すごく嬉しいと思っている自分がいる




『なんか…、久しぶりだね』

「そうだね」




あれ?なんか目の下に隈が出来てる気がするんだけど…




「…隈、大丈夫?」

『え!?あ、うん!全然大丈夫だよ!』

「そ、そう?」

『うん!』




なんか慌ててる気がするけど…、僕に何か知られてほしくない事があるのかも…。

その日からまったく名前ちゃんに会えなくなった




「………」

「新八?どした?」

「…名前ちゃんに会えてなくて…」

「そのうち会えるんじゃねぇか?」

「…そうですよね」

「また現実逃避するアルか?日めくりカレンダーならここにあるアルヨ」

「…神楽ちゃん、そういうのいらないよ」

「つまんねぇアルな…」




うるさいよ。こっちは会えなくてイライラしてるんだ。会いたいにも家の場所だって知らないし




「…はぁ」




情けないな…。侍が好きな人に会えないだけでこんなに陰気くさくなるなんて…









***



――――ガラガラ



「おはようございまーす」

「新八、ちょっと来い」




朝からなんだろう…。ちょっと銀さんの顔が怖く感じるのは気のせいだろうか…




「はいはい、何ですか…」

『あ、新八くん久しぶり!』

「え?なっ…!名前ちゃん!?」




な、なんで万事屋に名前ちゃんがいるんだ!?
でも…、あんなに会いたかった人が目の前にいる。今すぐ抱き締めたい気分だ。
せめて隣に座った




「おい、神楽。定春の散歩行くぞ」

「おー、行くヨ定春」

「わん!」




ぎ、銀さんが珍しく空気を読んでくれた!!
まるで夢を見てるみたい…




『あの…、はい!これプレゼントです』

「え?」




名前ちゃんから可愛くラッピングされた袋を貰った




「でも…、僕誕生日とかじゃないよ…?」

『私があげたいと思ったから!』

「あ、開けてもいい?」

『うん』




丁寧にリボンをほどき、袋から何かを取り出す。




「これ、手編みの手袋?」

『これから寒くなるでしょ?…新八くんの為に一生懸命作ったの』

「え…」

『坂田さんから、新八くんは最近手袋を欲しがってたって聞いたから…』




もしかして、最近会えなかったのも、僕の為に手袋を作ってくれていたから?寝もしないで?だからあの時隈が…




「名前ちゃん…」

『ん?』

「今、めちゃくちゃ抱き締めたいです…」

『え!?』

「な、なんか…、僕の為に一生懸命手袋を作ってくれるのって可愛いなと思って…」

『新八くん…』




僕はゆっくり彼女を引き寄せ抱き締めた。
名前ちゃんは抵抗をしないって事は期待してもいいよね…?




「僕、名前ちゃんが好き」

『え?』

「まだ名前ちゃんの事よく知らないけど、これからいっぱい知りたいな」

『ありがとう…!私も、新八くんの事好きです!もっともっといっぱい知りたい!!』

「ありがとう」





貴方のテブクロ
(名前ちゃんは手袋あるの?
(あ、ない…
(でも大丈夫だよ、僕が温めてあげるから
(ありがと…

(なんだありゃ…
(うまくいったみたいアル
(わん!



20130514

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