嘘じゃない、ホント




「おい、なんで名前がいんだよ」




布団の中で、具合悪そうに寝ている奴が目を覚まし、私に話かけてきた




『…晋助を看病しようと思ってさ』

「いらねぇよ…」

『先生も心配してたよ?それにヅラや銀時だって』

「はっ、名前は嘘ばっかりじゃねぇか…」




私は塾で“嘘つき女”って呼ばれてる。ただし先生とヅラと銀時と晋助だけは“名前”ってちゃんと名前で呼んでくれる




『だったら晋助も塾のみんなみたいに私を“嘘つき女”って呼べばいいでしょ』

「…っ」




私を睨む晋助。
はっきり言って今の晋助に睨まれても怖くないからね。
相当弱ってるな…




『無理しないで大人しく寝てなさい』

「うるせぇ…」

『寝てなさい』

「嫌だ」




どうしたら大人しく寝てくれるのかな…。
寝てれば少しは良くなるのに…




『あ、そうだ。晋助ちょっと左に行って』

「なんで…?」

『いいから!この布団大きいんだから大丈夫!』

「チッ」




舌打ちしても移動してくれる晋助は優しいと思う。
移動し終えた晋助の隣に私はゴロンと寝転がる




『私も一緒に寝るから』

「はぁ!?」




…今日一番の元気だと思う




『だって大人しく寝てくれないから…』

「わ、わかった…!大人しく寝るから布団から出ろっ!」

『嫌ー、私も眠いもん…』

「…はぁ」




睡魔が私を襲う。




「………」

『晋助…。手、握ってくれる…?』

「…わーったよ」




顔真っ赤にしちゃって…。
可愛いな…、って言ったら確実に殺されるね。言わないでおこう…




『……スー、…』

「大人しく寝れるわけねぇだろーが…」









***



‐翌朝‐




『ヅラ!銀時おはよー』

「はよ…」

「ヅラじゃない桂だ。おはよう名前」




今日も塾に通う。ヅラと銀時はいつもみんなより朝早く塾に来る。
(銀時は先生と暮らしてるから当たり前だけど)




「高杉はどうだった?」

『うーん、今日たぶん来れるんじゃないかな?』

「そうか、昨日は朝から何時頃まで看病したんだ?」

『えっと、朝から夜かな?途中一緒に寝たんだけど…、仮眠のつもりが起きたら朝になってて…』

「「(一夜を共に過ごした…?一緒に…)」」

「あ、嘘つき女が来たぞ!」

「うそつきー」




はぁ、子どもみたいな事するんだね。
今ヅラと銀時と楽しく話してるから邪魔しないで




『いい加減にして。嘘つきじゃないんだから』

「嘘つきだよ!お前ん家にお父さんいないんだってな」

「結構前に家族全員で海に行ったって言ってたけどさ、お父さんがいねぇんだから全員じゃねぇだろ!!」

「お父さんはー?」

『…っ!』




たったそれだけの為に“嘘つき女”って呼ばれる意味がわからない。悔しい。こんな奴らに好き放題言わされて、言い返したいのに…言葉が出てこない。代わりに涙だけが出てくる。いや、こいつ等の前で泣くもんか!!




「いい加減にしろ」

「醜いぞ貴様ら」




銀時とヅラが私の前に出てきて、庇ってくれている




「はぁ?事実じゃん」

「そうだよ」

「それに、お前ってお母さんに酷い事されてるって俺のお母さんが言ってた」

『…!?』




子どもにしたら体の大きい男子が私の腕を掴んで浴衣の袖を捲ろうとする




『や…、やめてよ!』

「テメェ!名前に触ってんじゃねぇ!!」

「先生を呼んでくるぞ?」

「うるせーな!おい、みんな見てろよ!」

『い、やだぁぁあ!!』










――――ドカッ!



「ヴッ!!」

「いい加減にしろよ。うるせぇな…」

『………』




男子は腹を抱えながら床に倒れていて、私の前にはいつの間にか晋助が立っていた




『しん、すけ…?』

「おめぇら、今後名前に触ったらそいつの様にするからな…」

「俺はー?」

「俺は?」

「銀時とヅラは別だ」









***



『…ありがとう』

「別に…」




顔真っ赤なくせに…。
あの後、騒ぎに気づいた先生が現れ、その場は落ち着いた。
事情を知った先生は3人の男子を謹慎処分にした




『私、嘘つきなのかな…?』

「…嘘つきじゃねぇよ。名前は素直な奴だ」

『晋助は、私の事嫌いじゃない…?』

「…嫌いだったら、看病なんてさせねぇよ」

『…ねぇ、考えた!』

「何を?」

『私ね、ずーっとずっと晋助と一緒にいたいなって思う』

「…だから?」

『私と結婚しよう!』

「はぁ!?」

『結婚したら、晋助と一緒にいれるんだもん』

「……」




晋助は再び顔を真っ赤にして、こちらを見たまま固まっている。




『…だめ?』

「…わかった。俺も名前とずっと一緒にいたいから結婚してやる」

『ありがと晋助!』

「これ嘘じゃねぇよな?」





嘘じゃない、ホント
(晋助ー、今日の夜は何がいい?
(名前の好きなヤツ
(うん、わかった
(…包丁に気をつけろよ
(わかってるってー

(晋助様って…、名前さんの前だとアノ怖いオーラないっスね…
(そうでござるな。びっくりするくらいに…



20130506

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