好きって言えなくて




『総悟!クレープ食べに行こうっ!!』









***



「奢りですぜー?」

『わかりましたー』




名前の自転車で、クレープ屋を探しまわっている。もちろん俺の後ろには名前が座っているわけで…




「つーか、なんでクレープ屋がいつもの所に無いんですかねィ」

『私も予想外だった…』

「ちゃんとしてくれ相棒」

『すいません』




名前と俺は幼なじみ。幼稚園の頃からの仲。よくみんなに「好きじゃないの?」って聞かれますけどねィ…、俺でもよくわかりやせんよ




「(どーなんですかねィ)」

『総悟ー!あった!!クレープ屋さんあった!!!』

「おっ…」




俺はクレープ屋の少し離れた所に自転車を止める。




『買ってくるからここで待ってて』

「よろしくー」




クレープ屋に向かう名前の背中を見つめた。
俺は…ずっと名前の傍にいやした。今更「好き?」なんて聞かれても正直わかりやせん。
まぁ、名前の事好きか嫌いか聞かれたら好きに決まってる。嫌いだったらずっと一緒にいやしない


近藤さんが前に言ってた。「まず自分の心に正直になれ、じゃないといつまで経っても自分の気持ちに気づかない」って…




「自分の心に正直…か」




名前の方を見ると、ちょうど俺達と同じくらいの男2人が名前に話し掛けていた




「チッ!」




困ってる名前の顔好きだけど、他の野郎が名前の困った顔をさせるのは気にくわねぇ




「クレープ2つも食べるの??」

「太るぜ?」

『あ、あの…』

「可愛いー」




名前を可愛いなんて言うんじゃねぇやィ…!!




「名前!遅いんでィ。待ちくたびれたぜィ」

『…総悟』

「君だれ?」

「邪魔すんなよ」

「…名前、行くぜィ」

『うん』

「待てよ!」

「テメェは関係ねぇだろ」




…うるせぇなぁ。
まぁ、喧嘩嫌いな名前の前では殴り合いはしねぇけど




「関係ありまさァ。俺は名前の彼氏だから」

『え…』




名前の片方の手に持っていたクレープを持ち、あいた手で名前の手を引っ張った。
そのまま、自転車を止めた所まで歩く




「はぁ、あぶねぇ…」

『そ、総悟…』

「ん?あ、金返す」

『それより…、彼氏って…』




名前の顔が俯く。覗いて見ると、失礼だけど顔がタコのように真っ赤だった




「あ、あれは…名前を助けるためでさ。と、とにかくクレープ食べるぜィ」

『…うん』




ダメだ…、ちょっと意識したらスッゲー緊張してきた…。なんでですかねィ?




『美味しいね』

「あ、あぁ…」




意識してたらまたさらに緊張してきた…。やべっ、まともに顔見れねぇ…




「な、なぁ名前」

『ん?』

「その苺クレープ旨そうだから一口ちょーだい」

『いいよー、はい』







―――パクッ



「ちょーだい」とか…俺は女子かってーの




『私も総悟のバナナクレープ食べたーい』

「ん」




俺はバナナクレープを名前の口の前まで持っていく







―――パクッ



『美味しい!』




なんか、いつもの事なのに今日は凄く可愛くみえるのはなんでですかィ




『うまーい♪』

「………」




“自分の心に正直に”か。近藤さん、俺は…たぶん昔から名前が好きだったんだ。ただ、恥ずかしかっただけなのかもしれない




「近藤さん、俺素直になりまさァ…」

『え?近藤くん?』

「名前」

『ん?』




素直、素直になれ…!




「お、俺は、ずっと前から名前が好きでさァ。だから、俺の彼女になってくだせェ」

『え?』

「…名前は?」

『あの、私もね、ずっと前から好き!だから、さっき助けてくれた時「彼氏」って言ってくれたのが嬉しかった!』

「名前…」





好きって言えなくて
最初から素直になればよかったんですねィ



20130416

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