お見合い



「…たまさん」




たまさん、玉さん、○玉さん

山崎さんが万事屋の監察を終えて、屯所へと帰ってきた。なんか彼、帰ってきてから部屋で「玉さん」ばっかり言うんだよね…。変態だね




「名前ちょっといいか?」

『なんですか?副長』

「お前…、万事屋の野郎と見合いしろ」

『…え?』

「形だけの!いいか!?形だけの見合いだ!」

『あ、はい…』




副長私の前に現れたと思ったら急に変な事言いますね、どうして見合いなんて…?ってかなんで万年金欠男と形だけの見合い?ってか…み、見合い!?




『…見合い?』

「見合い」




わ、私は山崎さんが好きなんですよ!?
なのに見合いなんて…!

なんて口には出せない。私と副長がいる所は山崎さんの部屋の前だから




「山崎も見合いすっから」




山崎も?山崎もォ!?




「すまん…」

『平気ですよ…』

「ちなみに明日だからな、見合い。忘れるなよ?」

『あ、明日ぁ!?』

「なんだ、文句あんのか?」




文句あるよ!明日とか早いから!まだ心の準備とかが欲しいんですけど…!!









***



‐見合い当日‐




『準備はOKです』

「おう。さて、車用意したから見合い場所に行くぞ」

『…はい』




外に停めてある車へと向かう為、綺麗な着物を着て廊下を歩いていると、前から山崎さんが歩いてきた




「あれ?名前ちゃん綺麗な格好してどこ行くの?」

『えっと…』

「…見合い。万事屋と見合いすんだ。万事屋も名前ならOKだとよ」

「…え、見合い?」

『は、はい…』




なぜか山崎さんの眉が一瞬眉間に寄った。
この場にドヨ〜ンとした重い空気が漂う。…しかしそれを遮ったのは、私と見合いをする相手だった







――――ドタドタ!



「名前ちゃぁ〜ん!!」




ドタドタと玄関から上がり込んでくる足音。私はいま山崎さんと話してんだよ!

…ん?銀さん?




「うわぁ!可愛いっつか綺麗!!もう嫁に来い!!」




来るなり突然抱き締めてきた銀さん。なんか、銀さんの腕ってゴツゴツしててカッコいい腕だな…




『ぎ、銀さん!』

「おい万事屋!!名前から離れろ!!」

「んだよ多串くん、名前を嫁にやるってお前が言ったんだぞォ」

『副長、お母さんみたい』

「俺は多串くんでもお母さんでもねぇ!」

「ふ、副長…名前ちゃんは旦那と見合いなんですか?」

「「そうだ」」

『仲が良いですね』

「「仲良くねぇ!!」」




息ピッタリなんだから仲良いじゃん…。
うわ、そんな怖い顔して睨まないでよ…




「名前ちゃん!!」




いきなり、ガシッと山崎さんに腕を掴まれる。




『や、山崎さん!?』

「話がある。…来て」

「ジミー、くれぐれも俺の嫁いじめんなよ」

「…ヘイ」









***



「…真選組にはもういなくなるの?」

『それはないと思います。ここで働いてますよ』

「そっか…。マジで旦那の嫁になるの?」

『まだわかりません。万事屋さんの事、あまりわからないんで』

「じゃあなんで旦那と見合いするの?」




山崎さん…、なんかイライラしてる様に見える…?
意味がわからない!山崎さんだってたまさんが好きなくせに…!!




『副長が決めたんです』

「名前ちゃんは副長が決めたから見合いするの?」




山崎さんだって…!山崎さんだってたまさんと見合いするくせに…!!




『…だったらダメですか?』

「え?」

『山崎さんは見合いをするのに、私は見合いダメなんですか!?』

「いや、そんなわけじゃなくて…。ってか見合いするって誰から…」

『副長ですっ!!』

「そっか、でも…」

『何!?何が言いたくて私をここに連れて来たんですか!?山崎さん!!』

「あの、名前ちゃん…」




私は気づかぬうちに涙をポロポロ流していた。
山崎さんの前では泣きたくなかったのに…!昨日の夜は出なかったのに、なんで今出てくるんだよ!!




「あの、話終わりました?」

『銀…さん…』

「旦那!?」

「あぁ…。ジミーが俺の嫁泣かしたー、いじめたな?コノヤロー」




銀さんは私の傍まで来ると、泣いている私の肩を抱いた




『!?』

「だ、旦那?」




…銀さん、顔近くない?

すると銀さんが耳元で、
「リップ音は俺が作るから、キスするフリしろ」
と、囁いてきた。







――――チュッ



「………」

「誓いのキス…、だな」




銀さんは山崎さんを見て、ニヤリと笑った。
もしかして…、副長と銀さんは…




「名前ちゃんにキスするなっ!!」

『や、山崎さん!?』




山崎さんは突然、銀さんと私の間に割り込んできた




「ジミー、お前さ…ちゃんと気持ち伝えろよ。そんなんじゃ名前はわからねぇよ、鈍いから」

『に、鈍くない!』




やっぱり…
最初から副長と銀さんは見合いなんてするつもりなかったんだ。
山崎さんに気づいてほしくて演技してたの…?




「…名前ちゃん!」

『は、はい!』




山崎さんは私の両肩を掴んで、まっすぐな瞳で私を見た




「俺、…名前ちゃんがすごく好き!!」

『…見合いはどーするの?玉さんほったらかすの?』

「た、玉さん?たまさんだよ!見合いは断るから気にしないで!」

『〇玉さんが可哀想でしょう?私より先に金玉さんとの見合いを片付けて!』

「〇玉さんでも金玉さんでもないから、たまさんだから!…わかった、片付けてくるから待ってて」







――――ドタドタ!



「よかったな名前ちゃん」

『…銀さんありがと』

「いーよ、別に。っつかマジで名前ちゃんと結婚したかったな」

『どうせ嫌々で副長の作戦に参加したんでしょ?言ってくれればいいのに…』

「いや…、土方くんに“名前と見合いするフリをしてくれ”って言われてよ、名前ちゃんとフリでもいいから見合いできんならいいかなって思ってさ…。じゃあ、俺は帰るよ」

『本当にありがとう!後でいちごオレ渡しに行くから!』




私に背を向け、手をヒラヒラさせる銀さん。
帰っていく後ろ姿がすごくかっこよかった









***



それから、山崎さんは息を切らしながら食堂にいた私の所へと来た。と、思いきや…




「たまさんの見合いはなくなったよ!好きだ名前ちゃんっ!」




…と、バカデカい声で言われた。みんなに見られてるわバカヤロー




『私も、好き…』





お見合い
後々、沖田隊長からからかわれるのは目に見えている



end.

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