サプライズ




「し、晋助様ァ!」




バタバタと船の中の通路を走る、来島また子




「…どうした来島」

「名前が…!名前が船からいなくなったっス!」

「んなわけねぇ―…」




高杉が否定をしようとしたところに、もう1人こちらに向かってくる足音が聞こえた




「晋助!名前を見なかったでござるか!?」

「………」

「名前どこ行っちゃったっスかー!?」




そんなはずわねー…
名前は、俺に黙って外に行くような奴ではない事は、俺が一番よく知っている。…が、来島も万斉も名前を捜している。マジでいないのか…?




「テメェらは船で待ってろ。俺が外を捜しに行く」




焦りは表に見せなくても、心の中では名前の事でいっぱいだ。俺は船を出て街へと向かった




「うまくいったっスね…」

「あぁ。しかし、あの様子だと、晋助が船に帰る頃には息切れのはずでござる」









***



「…チッ、いねぇ。ハァ、ハァ…」




街はだいぶ捜した…。こんなに捜してもいねぇって事は、誘拐でもされたのか?…名前には刀を持たせてねぇ、もしかしたら敵にあって斬り殺されたってのも考えられる。
ダメだ、俺の頭の中はもう最悪な出来事しか浮かばなくなった




「…くそっ、なんとか名前をみつけねぇと…」

「あ、高杉」

「ぁ゙!?」




すっげーイライラしてた。
名前を呼ばれてので後ろを振り返ると…、立っていたのはヅラだった。




「貴様…、指名手配犯だぞ?何呑気に外を走っている!」

「ヅラ…。お前、俺が呑気に見えわけ?」

「ヅラじゃない桂だ」




ダメだ。こいつに聞いても意味ないな。
そろそろ息を整える




「(一応聞くか…)」

「あ、俺も指名手配だった」

「おいヅラ、髪が長くて童顔の女を見なかったか?」

「…さぁ、知らんな。…高杉の彼女か?」

「彼女じゃねーよ」

「貴様の船に戻ってるんじゃないか?もう夜遅いし」

「…あぁ」

「じゃあ、俺はエリーと晩ご飯なんでな!さらばだっ!」




ヅラはすごい速さでこの場を去って行った。
仕方ない、一応船に戻るか…









***



「来島!万斉!名前は戻ってねぇか!?」




急いで船に帰り、部屋の障子を荒々しく開けると…




「「「「「『ハッピーバースデー♪高杉晋助!!』」」」」」







――――パンッ パンッ



「は…?」




そこにはクラッカーを持ったみんなが笑顔で俺を待ち受けていた…。もちろん名前も…




『晋助さま!誕生日おめでとうございます!』

「お前、船からいなくなったんじゃ…」

「晋助様、許して下さいっス!晋助様を船から出させてその間準備をするって、そうゆう作戦なんスよ!」

「これは最初から名前が考えた作戦でござる。晋助の為にって張り切ってたでござるよ?」

『はい!』




なんだよ…、それ。
嬉しいが俺はめちゃくちゃ心配したんだぞ?







――――バシッ!



突然の出来事に部屋中が一瞬で静まる




『え…』

「晋助様…?」




気がつくと俺は、名前の左の頬を平手打ちしていた




「テメェ…、俺がどんだけ心配したと思ってんだ…?俺ァな名前が誘拐されたんじゃねーかとか、斬り殺されたんじゃねーかとか色々考えちまって焦っている間に楽しくみんなでパーティーの準備か?俺を怒らせるのもいい加減にしろ」




俺は、そばにあった料理を蹴飛ばした。
その料理はテーブルから派手に畳へと落ちた




『あ…』







――――スパン!



俺は頭を冷やそうと、風にあたろうと思い、外に出た。そして船の先端まで行き夜空を眺める




「…今日は俺の誕生日か。完全に忘れてたな。まぁ確実に今年の誕生日は最悪だ」




やっちまったなと今さら後悔してきた。すると後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた




『晋助さま!ごめんなさい!まさか晋助さまが私の事をそんなに心配してくださるなんて思っていませんでした!』

「名前…」

『怒るのは私だけにしてください!みんなは私が巻き込んだだけです!みんなの事は、どうか怒らないでください』




名前の頬には赤い手形がついてて、少し腫れていた。…さっき俺が叩いたしな




「名前…、こっち来い」

『?』




名前は素直に俺に従う。近くなってきたところで俺は名前の腕を引っ張り、抱き寄せた




『し、晋助さま!?』




名前の赤くなった頬に、手を優しくそえる




「俺がお前を心配してた理由、テメェにわかるか?」

『…仲間だからですか?』

「ちげぇな」




俺は名前の唇に軽く触れるキスをした




「こういう事だ」




きっと俺はニヤリ顔をしてたと思う




『…え、え!?い、今の…キ、キス!?!?』

「…俺はお前が、名前が好きだから心配したんだ」

『し、晋助さま…!私も好きです…!大好きですっ!!』

「ありがとよ」





サプライズ
この後、仲直りした晋助と名前は再び部屋に戻り、誕生パーティーを開催した。2人はみんなの前にもかかわらずラブラブしていたという

By,また子&万斉



20120810

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