んまい棒




『桂みーっけ』




私は仕事をしている。
何の仕事かだって?…攘夷志士を逮捕する警察です




「げっ、名前…。なぜお主がこんな所に…」

『だって警察だもん。桂くらい見つけないと』

「おい貴様、桂“くらい”とはなんだ」

『まぁまぁ、後は真選組で話しましょうか』

「ふ、ふざけるな!!あ、幾松殿、蕎麦美味かったぞ」

「あ、あぁ…」

『はぁ!?あんたまた幾松さんの蕎麦食べてたの!?私の蕎麦は食べないのに最低!』

「そーゆー訳ではない!名前は真選組だしな…」

『うぇっ、…グスッ』

「泣くな!!」




酷い…!私が作った蕎麦は絶対食べてくれないのに…




「あの…、夫婦喧嘩なら店の外でやってくれないか?」

『「喧嘩じゃない!!」』

「(あっ、夫婦は否定しないんだ…)」

「ってか貴様は、彼氏の俺を差し置いて容赦なく捕まえる気か!!」

『じゃあ桂は、彼女の私を差し置いて他の女の人とイチャイチャするの!?』

「イチャイチャなどしておらん!クチャクチャだ!」

『クチャクチャって何!そんないやらしい関係なの!?いやらしい!』

「いやらしいをいやらしいって言った奴がいやらしいんだ!違う!店主と客の仲だ!」

『私の作った蕎麦食べないくせに!!』

「それはお前の上司が丁度よく現れるからだろうが!!ホントは、お前の蕎麦を食べたいんだ!」

『私だって食べてもらいたいよ…!!』

「じゃあ今作ればいい」

『…え?。でもさっき幾松さんの蕎麦食べてたのに入るわけないじゃん…』

「名前…、俺の為に蕎麦を作ってくれるか?」

『…うん、わかった!ありがとう小太郎!』




私はすぐ、キッチンに入り蕎麦を作り始めた。
小太郎に食べてもらいたくて、ずっと頑張って蕎麦の練習してたんだよ…




「…あれ?私存在忘れられてないか?ってか勝手にキッチン使ってる!」









***



『はい、小太郎!』

「ん、見た目は前より良くなったな。名前は料理が上手くなったか?」

『だってずっと頑張ってたもん!』

「どれどれ…」




小太郎が、私の作った蕎麦に手をつけようしたその時だった…







――――ガシャン!



「かーつらァァア!真選組だぁぁぁあ!」

「チッ、また邪魔が入るか!」

『………』

「(名前さんすごい落ち込んでるんですけど…)」




また小太郎に食べてもらえないんだと、私が思っていると、ふと体が軽くなった




「来い名前!!」




どうやら、小太郎が私を肩に担いだみたい。
今まで真選組に見つかったら小太郎は私を置いて逃げてたから、こんなの初めて…




『小太郎…?』

「ふはははは!!名前を連れていくぞ!!!幕府の犬どもめっ!」

「させるかぁぁあ!!」

「んまい棒…、混捕駄呪!」







――――ドフッ!!



「「「『おわっ!』」」」




煙のおかげで、なんとか屋根に逃げる事が出来た。
屋根に着くと、小太郎は肩から降ろしてくれた




『私…、帰ったら皆に怒られるかも』

「怖いか?」

『こ、怖くない!』







――――ズルズル



『?』

「しかし、この蕎麦は美味いぞ」

『!?』

「名前は真選組でもやめて、幾松殿と一緒に働けばいいのにな」

『いい…、真選組でいい』

「…なぜだ?」

『だって真選組にいたら小太郎を追いかけられるもん。私は追いかけられるより追いかける方が好きなの。っていうか小太郎の背中を見るのが好きなの!』




でも、真選組と攘夷志士で付き合うのは無理がある。
自分がまさか攘夷志士と付き合うなんて思ってなかった。
いつか別れなきゃいけない時がくるのかな…?




「ははは、嬉しい事を言ってくれるな。けど、俺は後ろ姿だけじゃないぞ。…正面からは嫌いか?」




小太郎は、私を優しく抱き締めてくれた。
彼はポカポカして気持ちよかった…




『…は、恥ずかしいよ』

「不安になるな」

『え?』

「…っ、上目遣いとか可愛い事をするな!」

『う、うるさい!ってか話そらさないで』

「…名前は、いつか別れなきゃいけないと不安になっているのだろう?」

『…うん』

「なら大丈夫だ。俺は絶対に真選組には捕まらんからな。名前にもちゃんと会える。だから別れる心配もない」

『小太郎…』




私達は、お互いに向き合い見つめ合う…。
この時間がずっと続けばいいと思った




「名前…」

『小太郎…』




小太郎と私の影が重なる数センチのところで、また真選組に邪魔をされた。





んまい棒
(かーつらぁ!!
(しつこいぞ貴様ら!!今いいとこだったんだぞ!それを…それをぉぉぉお!!!
(蕎麦食べてくれた…
(おい!私の店を壊すな!!



end.

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