おいてかないで





『「いぎゃぁぁぁあ!!』」




今、土方さんと一緒に怖ーい怖ーいお化け屋敷を満喫中

は?満喫出来るかってーの




『ひ、ひ、ひじか、たぁぁあ!だずげでぇえ!』

「て、てめぇ!じ、じじじょうしに、タ、タメ口かぁぁぁあ!!」




恐ろしい。恐ろしすぎる。
なぜこんな恐ろしい建物がこの世にあるんだ!!
え?なんでお化け屋敷にいるかって?…考えただけでもイラッとくる。沖田の野郎後で半殺しにしたるわ!




『ふ、ふくちょう!!離れないで!私から離れないでよぉ!!!』

「そ、そんなガッチリ掴まれてたら、振りほどけるわけねぇだろうがっ!!」

『そ、そうか!!』




怖い…、帰りたいよぉ…




「うるせぇ!!今のお前の言い方が怖いわ!!」

『あれ!口に出てたの!?』

「………」









***



「こ、これでラストスパートだぞっ!」

『ふぐぢょぉぉお!!も゙お゙やだぁぁぁあ!!』

「うわっ!ちょっ…!お前汚ねぇな!!」

『びどい゙!!!!!』




仮にも私は女の子なのに「汚い」って酷いよ!!
怖くて怖くて仕方ないのに




「…名前、俺にちゃんと掴まってろよ!!」

『ふぇ、…はい』




副長が珍しく、私の手を掴んでこようとした次の瞬間――




「待ってぇ…、私の足を返してぇ…」




ゆっくりと声のした方に顔を向けると、そこには白いワンピースを着た血まみれの女の人が床に這いつくばっていて、私達に向かって来ている




『「ひぃぃぎゃぁぁぁぁぁあ!!!!」』




全力疾走で走るのは…、副長だけ。私は腰が抜けてその場から動けなかった




『ふぐぢょぉぉお!!!』

「あ、あたしの…足…」

『いやだぁぁぁぁあ!!ごな゙い゙でぇ゙!!!』









***



「あ、焦った。マジで焦った…。なぁ?名前…」




出口まで全力疾走してきたから、息があがる。ひと安心して息を整え、後ろを振り向くと、そこに名前はいなかった




「う、うそだろぉぉお!?」




そこで初めて、名前をあの場所に置いてきたのだと気づいた。












‐その頃‐



『ふぇ!も゙お゙やだー!』

「…だ、大丈夫ですか?」




…お化けに心配された。




「無理でしたら出口はこちらにありますよ?」

『あ、ありがとう……ございます……ズビッ…』




大泣きしてる私に出口を教えてくれた。優しいお化けさんだ。それに引き換え副長ひどい…、助けにも来てくれないなんて…


そう思い、私が扉に手を置いた時だった





「名前!!」

『…副長?』




副長が私の前で立ち止まった。走ってきたのか、肩を上下に動かし、息があがっている




「ごめんな…」

『お、おいてかないでくださいよ!バカ!お化けに心配されたじゃないですか!!!』

「ごめん」







――――ギュッ



こんな怖いお化け屋敷で、副長に抱き締められるとは思ってなかった…




『ふ、副長…?』

「ハァ…、スッゲー焦った。いいか?名前は俺から一歩も離れるな」

『きゅ、急に何ですか…?』

「…うるせぇ。お前は「はい」って返事だけすればいいんだよ」

『は、はい』




お化け屋敷なんて2度と行くか!!沖田総悟め…!明日になったら覚えてろよ!




「なんでィ。俺のおかげじゃねーですかィ」




お化け役に忍び込んでた人が1人いました。白いワンピースを着た血まみれの女役として…





おいてかないで
(副長、一緒に寝て下さい
(なっ!
(今日の事思い出すと怖いんです…
(チッ、仕方ねぇな!
(ありがとうございます!



end.

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