約束しよう






桜が舞う時期―…‥






















『トシー!待ってー!!』

「早くしろよ、お前」




俺は、幼なじみの名前とスーパーの買い物に来ていた




「はぁ、もたもたすんな」

『もたもたしてないよ!マヨネーズを探してるの!』

「何!?マヨネーズはあっちにあったぞ!ちゃんと見たのか!?」

『………』




これは、近藤さんや総悟、ミツバに会うちょっと前の話。

買い物を終えた俺達は、荷物は俺が持ち、話ながらオレンジ色に染められた帰り道を歩いていた。




『トシ、気をつけてね』

「…何が?」

『最近、よく狙われてるでしょ…?』

「…大丈夫だ。名前を絶対に傷つけたりさせねぇから、約束だぜ?」

『トシ…、でもね、トシも傷ついてほしくないの…』

「俺は平気だ」




彼女は俺の唯一の親しい人

この頃名前だけが俺を“トシ”と呼んでた




『…トシって優しいね』

「なっ!馬鹿にしてんのか!!?」

『馬鹿にしてないよ?』

「…チッ」

『ふふ、顔真っ赤』

「う、うるせぇ!ほら荷物!マヨネーズ、ありがとな」

『…どういたしまして』




そのあと俺達は別れ、それぞれの家へと帰っていった。
まぁ、俺に家なんてねぇけどな…









***



次の日
俺は、オレンジ色に染められた昨日とは別の道を歩いていた。




「そこのお兄さん。俺らと遊ぼーぜ」

「“殺しあい”の間違いじゃねーの?」

「生意気だなぁ…、これを見てもそんな態度でいられるかぁ?」

「?」




殺気にまみれた男が俺の前に連れてきたのは…、


体のあちこちを殴られ、ぐったりとした名前だった




「なっ…!名前!?な、なんで…!」

『…ト……トシ、…?』

「名前に何した…、離しやがれ!!」

「ニヒヒ!俺らに殺られなぁ!糞ガキィ!」




嘘だ!!
なんで名前がこんな事に…!なんで関係ない奴を殴る必要がある…!!どうしてこんなになるまで殴ったんだ!!!!!





名前―…!!!
























「ハァハァ…、名前、…無事か…?」

『……トシィ…』




名前は、殴られて意識が朦朧としているのか、すでに虫の息だった




「…死ぬなっ!…頼むからっ…生きろ、頼む…!!俺の傍で……笑っててくれ!!」




俺は名前の手を握るが、名前は握ってこない。力が弱くなってきているみたいだ




『…トシ、……好きだよ…、……ゲホッ。やっと、告白、してくれ、た…。…私の分…まで……生きて、ね…』

「名前、名前っ…!!」




名前が俺に微笑んだ後、名前の手がスルリと俺の手から抜けて、地面に落ちた




「…名前!名前起きろ!!死ぬなよォォ!!!」

「おいっ!大丈夫か!?」

「…誰だ、てめぇ」

「そんな瞳孔開くな。俺は近藤勲だ!ってかその女の子は!?」

「近藤とか言ったな!助けろよ!名前を助けろよォ!」

「落ち着け!!ちょっと失礼する…」




名前はホントに死んでしまったのか?
近藤って奴は、名前が生きているか確かめる為、名前の首に指をあてた




「おい、どーなんだ…?」

「………」




悲しい顔をしながら首を横に振る近藤




「嘘だろ…?おい名前!笑えよ!俺の傍で…!!」




やはり、揺らしても名前はビクとも動かない。
なんで…!名前を傷つけないって、あの時約束したじゃねぇかっ…!!
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!




「…君、名前は?」

「ひ、土方…十四郎ぉ…」




もう2度と女なんか好きにならない。守れないのなら、俺は女と結ばれる資格なんてない。
名前、約束守れなくて…ごめんな









***




‐現在‐



俺達は江戸に上京し、真選組となった。




「あぁ、土方のくせにこの時期になると陰気くさくなっていけねーや」

「…すまん」

「…まぁ、仕方ねーか。土方さんの1番大切な人が死んじまった時期だもんな…」

「…あぁ」

「トシ!春だぞぉー!!」

「あぁ、そうだな」

「死ね土方」

「あぁ、そうだな……
って何言わせてんだ!!てめぇ!!」

「へっ!まんまでさァ!」

「たたっ斬る!!」




名前、今度は約束を守る

心配しなくていい…
お前の分までちゃんと生きてやるよ。
たくさん仲間が出来たから、昔よりはるかに楽しいぜ





約束しよう
名前がいればもっと楽しいのにな…



end.

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