そっか。
今この学校は消滅する。私らの目の前で。赤黒く唸る鉄格子。久しぶりに見た淀んだ重い色の空は、私らが怯えるにも容赦なく揺れ続ける。
「なあ、苗木」
「なに?」
私は苗木を呼んだ。今までの馬鹿な男どもとは全く違う、私を見てくれた単純でビビりで普通な苗木は私の声に意識をはっきりとさせ、ふと我に返った。
「最期に、手え、繋ごう」
私の言葉に苗木はそっと手を差し出した。ああ、今私の頼れる人は苗木だけ。
そっか。だって、死んだもんね。みんなみんな、大和田だって、ついさっき目の前で死んだもんね。
「うん」
苗木の手を握った。暖かかった。温もりに触れながら、私は消えてゆきたかった。私は苗木しか頼れない、苗木にも、もう私しかいない。素晴らしいシチュエーション。この学校の滅亡を苗木と一緒に迎えよう。
いや、それよりも先に私の人生を終了させよう。
そう思いながら、苗木の手を力強く握って飾らない自分の瞳をゆっくり閉じた。
(バイバイサヨナラ私の世界)
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2014.1.27
ダンガンロンパ/苗木と江ノ島
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