小説 | ナノ


▽ 世界が 壊れる音 が、し た


*暗い&カプ要素薄め



暗い部屋で、無機質に光を放つテレビを見つめた。暗い中でとても明るいものを見ていると目が痛くなる、よくある現象も今の私たちには関係がなかった。
──どうして。
液晶の向こう側では、ガイアが、ジェネシスが、グランが、ヒロトが、あまりにも綺麗なジェネシス計画の終焉を迎えていた。円堂守に手を引かれ、お父様に肩を支えられ、涙を流し、その様子を仲間が見つめる、その真ん中にいるのはグランだった。呆然とテレビを見ていると、隣にいたバーンが声を漏らした。

『なんだよ、これは…』

目を見開いて、口をガタガタと震えさせた。それが、悔しさからか、憎しみからか、寂しさからかは私にはわからないけど、ただバーンが太もも辺りで握り締める拳を見つめていた。これ以上テレビを見ていたら狂いそうだったから。何も言えない、というバーンの顔に痛いほど共感出来る私はぶちりとテレビの電源を落とした。バーンもなにも怒らなかった。きっと、彼も私と同じ気持ちだったのだろう。今にでもテレビを蹴飛ばしそうに足を震えさせていた。後ろで寝息を立てているのは、着の身着のまま、記憶も奪われて、富士の樹海に放り出され傷付いた仲間だ。痛かっただろう、辛かっただろう、クララ、リオーネ、ドロル、ゴッカ。私のチームメイトはこの四人しか見つかっていない。いや、四人見つかっているのも不幸中の幸いだったのかもしれない。何故ならバーンのチームメイトで私たちが保護できているのは、バーラとネッパーの二人だけなのだから。この際もうチームだとか、マスターランクだとかはどうでもいい。ただ、ダイヤモンドダストとして私に着いてきてくれた彼らとプロミネンスとして彼に着いてきた彼らを見つけて、安心させてあげたい。一刻も早くだ。テレビで中継を見ている人は何も知らない。私たちという犠牲の上で、この造られた終わりを迎えていることを。美しいエンディングは、ジェネシスにしか与えられず、今まで戦ってきた私たちのことなど今のお父様を脳裏には少しも残っていない。お父様は目の前のジェネシスしか興味を向けられなかったから。

「バーン、落ち着け」

隣で未だにがたがたと震えるバーンを見て、私は少しだけ冷静を取り戻した。彼の腕がぴくぴくと痙攣を起こしたように震えて、顔も今までに見たことがないくらい、バーンという生命体全てで溢れ出んばかりの怒りを表していた。私はバーンの震える手を触れると少しだけ垂れた眉に微笑し、頭を撫でた。私自身もそうすることでしかバーンが近くにいると実感出来なかったから。誰かが近くにいないと安心して立っていられなかった。崩れ落ちて、二度と同じ様に立てそうにもなく、そうして私はきっと死を迎えるだろう。それはいやだ。私がもがいてもがいてやっと取った手がバーンだった。だから、その手を離さない。そう思って、手を握る力を強くする。

「痛え」

「…すまない」

「謝っても手の力、変わってねえよ」

バーンは少し切なそうに私が握っている自身の手を見つめた。鋭くそして柔く、私を捕らえて離さず、胸が痛くなった。
大丈夫だ、バーン…晴矢。私にはお前がいる。無論、お前には私がいる。
そう思って、晴矢から顔を背けた。顔を見つめれば涙が止まらなくなりそうだったから。涙が出るのは、悔しさと、無力感と、喪失感と、そしてお父様に裏切られたという、私と晴矢しか知らない悲しさに、グランにのみ与えられた美しいエンディング。吐き気がした。

「大丈夫、晴矢…」

「やめろよ、…風介」

「君には、私がいる」

私は静かに目を閉じた。現実から逃げるように、見えなくなるように、瞼を静かに下ろした。怖くない、怖くない。
私たちには、まだ明日がある。眠れば、夢だと思える。嗚呼、眠れば………




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2014.03.29

後味悪くてすみません…
でも後悔はしてない← 



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