小説 | ナノ


▽ 君と僕、遮るものなくやっと結ばれた



*吹雪が普通に白恋の先生





吹雪と雪村は10歳、年が離れている。
でも、雪村は一切嫌なんかじゃない。なぜなら、吹雪は雪村を好きだと言ってくれるからだ。吹雪は年の差なんか関係ないと言ってくれるから、だけどやっぱり13歳の雪村には独占欲があり、吹雪が他の部員と接しているのを見るのも、聞くのも嫌なのである。耳を塞ぎたくなるとき、吹雪は必ず雪村の元へ来てくれる。雪村は腹の底で煮えるような憎しみと愛しさの感情の名前がわからなかった。
吹雪は悪戯を仕掛けた幼子のような笑顔で雪村のその話を聞いた。

「雪村、それは…やきもちだよね」

「やき………?」

やきもち、所謂嫉妬。
確かに、吹雪が他の生徒と仲良くしているのを見るとその相手が心底腹立たしく、吹雪と会話をする生徒が三年生であろうと苛立ちを覚える。まさか自分がそんなに醜い心に染まっていただなんて。雪村は今までに恋をしたことが無かった。だから自分に、嫉妬という感情を見いだしたこともないし、例え好きな人がいたとして相手に誰かといて欲しくないだとか、相手と誰かがなにかをしていようとどうでもよかったのだが、吹雪は少し違った。彼には自分だけを見て欲しかった。
教師と生徒。
その事実は常に雪村を締め付けて苦しめ、終いには消滅させられてしまうかのように吹雪と雪村を取り巻くのだ。
───ああ、彼が欲しい。他の誰でも無い、吹雪士郎の全てが。

「やきもち、ですか」

「おもしろいなあ、雪村は」

吹雪の言う一言一言が嬉しくて苦しくて切なくて雪村はそれは良かった、と呟きへにゃりと表情を緩めた。
吹雪はわりかし雪村のその顔が好きで瞳をじいっと見つめる。深い蒼の目、その中に映る自分はどれほどに情けのない顔をしているだろうか、想像も付かずただ雪村のその可愛らしい顔立ちに目を向けたままであった。吹雪は本能に従順であるが故、年性別関係なく好きならば好きではっきりと割り切ればいいという人間である。一方雪村はそういうことには疎い人間であり、好きもいまいちなにかわからないでいた。勿論、吹雪に出会う前である。吹雪は繊細そうに見えてきちんと選手の管理をしてくれているし、思ったことも厳しく指導してくれる。それらの全てが彼の心まで飲み込んで出来たのが今の依存してしまった雪村である。吹雪と交わす一言一言が愛おしい。吹雪に撫でられた頬が熱い。吹雪を見つめる目線が焦がれる。情けない気の抜けた吹雪の表情に雪村は手をかけた。

「……俺たち、ばれたらどうなりますか」

「…さあね。…そんな嫌な事は考えないようにしてるんだ」

その頬は少なからず紅潮していて分かりづらいがもう慣れてしまったその雰囲気。雪村の頬を撫でる吹雪の優しい手の感触に気を奪われて思わず目を閉じる雪村の目元に手を覆わせ視界を妨げる。
ちゅ、場に不釣り合いな幼い音が耳に届いてから雪村は改めて唇の違和感がキスをされたということに気付き目を大きくした。吹雪は笑顔で雪村の頭を撫で次は額にキスをした。

「雪村は心配するな。なにかあれば僕が守ってあげるから」

「嬉しいですけど…守る立場は一応俺です」

「ははっ、そっか」

雪村は笑う吹雪の自分より少し上にある頭を抱き寄せ唇を重ねる。吹雪は最初こそ雪村の近付いてきた顔に目を見開いていたが、その慣れた柔らかい匂いに包まれるにつれ開いた目をゆっくりと閉じる。名残惜しそうに離れる唇が相手の呼吸を求めるも雪村はキスしたあとのその吹雪の表情があまりにも年上らしくなく、あまりにも可愛いものだから思わず目をそらした。吹雪は頬を赤くして自分に背を向ける雪村に不満を覚える。

「こっち向いて」

「いやです」

「雪村からしといて照れるなばか」

「思ったよりも吹雪先輩が…可愛くて」

「なっ、大人はからかうものじゃないよ!」

ちらりと吹雪に目線を向けた雪村の顔を振り向かせまいと両手で押さえつけた。雪村はがっしりと吹雪の肩を掴んで振り向こうと必死になっていて、吹雪はその必死な表情にくす、と笑みが込み上げた。もう一度、雪村の頬にキスをした。愛おしくてたまらないその存在に。
年が離れていようと吹雪は一切嫌なんかじゃない。愛しい雪村の新たな一面をまた発見出来るからである。この年の差でないと出来ないことも、この年の差でないと見つけられない表情も沢山ある。自分が見ている雪村の表情はまだほんの少しでしかないとすれば、自分はまだまだ彼の表情、彼の成長を見続けたいと思っている。一番近くで、一番大切な人として見守りたいと。

「守らせてください、士郎先輩」

「わかったよ、豹牙」

くしゃくしゃと照れ隠しに雪村の頭を撫でた。雪村は嬉しそうに満面の笑みを向けた。






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2014.01.18

吹雪が先生だったら雪村絶対嫉妬とかしちゃうだろうなーと考えた産物です←


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