デートというのはロシア語では散歩という意味なのだろうか。そんな事を思ってしまう程にサイモンはいつも通りだった。
露西亜寿司の定休日、俺の仕事も早く終わったから会えるか?とメールを送ったら辿々しい日本語で了承の返事が帰ってきて、その文中にはデートなんて単語があったもんだから無性に照れ臭くなってしまった物だというのに。
いざ合ってみれば普段と変わらぬ仕事着、まぁこれは俺も同じだから良いとして、話す内容が寿司と平和の大切さだけっていうのはどうなんだ。
別に嫌いな訳じゃない。
露西亜寿司は何食っても美味いし、サイモンの口から平和平和と出る度に悪い気はしない。
ただそんな事は何時だって聞けるし聞いている。
つまり俺が言いたいのは、デートの時位そういった雰囲気の会話をしてみたいっつうような事で。
そういった雰囲気ってのは、わかるだろ?わかれ。
まぁサイモンは俺と違って無駄に照れたりしないし素直だから、聞けば返してくれるんだけどな。
「なぁ、サイモン…お、れの事好きか?」
「オー、シズオノコト好キヨ、スシヨリモー!」
「…そうか」
こんな感じだ。ムードもへったくれもあったもんじゃねぇ。
サイモンにムードなんて求める方が間違ってるのかもしれないが、俺はサイモンが時折見せる他の一面も知っている。
普段とは別人みたいな、やけに気迫のあるあの表情が好きだ。低い声でゆっくりと囁かれる声が好きだ。
勿論この楽天的でどこか掴み所の無いサイモンも好きだけどよ。
「シズオーケワシイカオシテ腹ヘッタカー?」
「別に腹は減ってねぇ」
「ジャア喉ガカワイタ?」
「気付けよ、馬鹿」
あぁ俺は本当に素直じゃないな。
こんな言い方じゃサイモンだって気を害する一方だ。
少しだけ悲しげに眉を潜めたサイモンを追い抜くと、後ろから伸びてきた手に腕を掴まれた。
そのままずるずると引き摺られ、力任せに路地裏へと押し込まれる。
日頃引き摺られる習慣など無い俺は、何が起きたのか理解する暇も無く。
反射的に顔を上げると目の前にはサイモンの顔が迫ってきていて、
「サイ、…っう、んんっ」
視界がサイモンで一杯になって、唇が厚い感触に包まれるのがわかった。
何で急に、こんな事。
怒らせちまったのか、それとも俺が望んでいるってわかっててやってんのか。
「シズオー、イマノイヤダッタカ?」
「嫌じゃ、ねぇけど…つか、何で」
「コウイウ事スルトシズオハ、マッカニナッテオコルヨー」
「そりゃ、恥ずかしくて…でも嫌いな訳じゃない」
サイモンは俺の照れ隠しを拒否だと思っていたのか。
俺が嫌がると思って、あえていつも通りのサイモンでいてくれたんだろうか。
確かにキスされればそっぽ向くし、触られた時は驚いてつい距離を取る。
怒っている訳じゃ無いが、そう思われても仕方無い態度ばかりだ。
「俺は、サイモンが好きだし…サイモンが何してきたって怒ったりしねぇよ」
「ホントニカー?」
「恥ずかしいだけだ、サイモンの為なら頑張って我慢する、から」
「シズオ…」
俺は初めて、自分からサイモンにキスをした。
恥ずかしくて死ぬかと思ったけど、幸せだ。
路地裏の壁に背中を預けたまま唇を重ね続けて、俺から仕掛けた筈なのにすぐに主導権を奪われる。
さっきよりも深くて濃厚なキスが思考を酔わせて、目の前が霞む。
身体中が熱くなってきて、ベストとシャツのボタンを外されている事に気付くのが遅れた。
露出した胸元に手を這わされて肩が震える。
「っは、ぁっ、サイモン…ここ、外っ」
「テレル、身体ニヨクナイネー」
「ん、ぁ、ちがっ…!」
外でなんて、人通りが少ないとは言え誰かに見られでもしたらどうするんだ。
恥ずかしいとかそういう問題じゃないのに、サイモンは照れ隠しだと勘違いしているのか手の動きを止める気配は無い。
ぎゅっと目を瞑ると、肩を掴まれ壁に手を付くような体勢にされた。
目の前には壁、真後ろにはサイモンの大きな体があってまるで個室だ。
耳を舐められれば街の喧騒なんてもう聞こえない、完全に外界と遮断された二人だけの空間。
「コレデ、モウハズカシクナイネー」
「ひぁ、っん、ぅ」
ベルトも外され、下着ごと膝までずり下げられる。
既に硬くなり始めていた自身を握られて、少しずつ先走りが溢れ出した。
傷の多さ故ガサついた暖かく大きい掌が自身全体を滑るように扱いて来て、恐ろしい程の快楽に首を振って耐える。
「ふぅっ、ひぁ、く」
「コエ、ガマンスルヨクナイヨー」
「や、ぁ、だぁっ…あ!」
前を扱く腕はそのままに、もう一方の腕が後ろの穴に伸ばされた。
止まぬ刺激に力の入らない身体はサイモンの太い指を容易く受け入れ、ぐちぐちと卑猥な音を響かせた。
自らの矯声とその音が耳を犯して、蓄積された快楽によって膝が震え出す。
目の前の壁にしがみつこうとしても引っ掻いた跡が残るだけで、下を向くように頭を擦り付ける事でなんとかバランスを保っている状態だった。
「ぁあ、んっ、サイモ…ン、ひぅ」
「イレル、イイカ?」
「っは、ぁ、いれ…て、っひぁあ!あっ、っ!」
崩れかけた下半身を支えるように中へと入ってきたサイモンの大きさに喉が引きつるのを感じる。
太い指に充分慣らされた筈なのにギチギチと締め付けてしまうのは、サイモンの自身が所謂巨根であるからだ。
苦しい程の圧迫感に襲われるが、進んでくる腰はまだまだ止まりそうに無い。
「ぁ、っく、んひ、ふかい…っ!」
「モウスコシネー、シズオダイジョウブカー?」
「もっ、ぁ、はいら…ね、っあ、んぁっ!」
根本まで埋まったサイモンの自身は常に俺の奥を抉っている状態で、少しでも動かされると止めどない快感が全身に行き渡った。
様子を窺うように軽く揺れたかと思うと、次第に激しく出し入れされる。
奥まで押し込まれる度に下半身が壊れるような錯覚に陥り、引き抜かれる度に体積の減少に寂しがる俺の中が締まり、そこをまたサイモンの大きすぎる自身に暴かれる。
そんな事をたった数回繰り返されただけで俺の腕は空を掻き始め、平衡感覚を失う程にサイモンの突き上げに一層依存した。
腰を掴んでいた両手のうちどちらかの手が不安定に揺れる俺の胸を支えて、その硬い指が律動の瞬間ざり、と擦れるのすら気持ち良くて堪らない。
「あっ、んぁ!っや、ひあ、ぁあっ!」
「シズオ、シズオノコトダイ好キダヨ…」
「ぁ、んっ、すき…ぃっ!おれ、も、す…きぃ!」
「シズオ、アイシテル」
「っやぁ、あ、あっ、ぁああぁあっ!」
奥のまた奥、下半身どころかその先まで犯すように思い切り突かれて達してしまった。
収縮する中からサイモンの自身が抜かれて、また身体がびくつく。
その直後晒け出された腰に熱い液がぶちまけられるのを感じながら、俺はサイモンと壁に身を任せたまま意識を手放した。
翌日、自宅で昼まで寝通しだった俺を出迎えたのは、いつものサイモンと豪華すぎる昼食で。
安っぽい食卓に置かれた高級寿司の詰め合わせという違和感を除けば、まるで同棲を思わせるこの状況に顔がまた熱くなって、サイモンにタコのようだと笑われたのだった。
セツナ様からリクエスト頂いた、デート中に立ちバックなサイ静でございました
個人的なコンセプトは照れシズって可愛いよね です(後付け
リクエスト内容見た瞬間サイ静の伝道師であるあのセツナ様だと確信余裕でした尊敬してます!
サイ静が初の試み過ぎて立ちバックとかデートとかの描写まで気が回っていないのがもろ分かりです
でも書いてて気付きました
サイ静の自由度の高さったら半端無いという事に
上目遣いがデフォとかサイモン恐ろしい人…!
まだ慣れが無いのでサイモンの口調を似非中国語にしないよう尽力するので精一杯な感じですが受け取って頂けたら幸いです
この度は一万打リクエストにご参加頂き誠にありがとうございました!