※小スカ
※えろではない
俺は暴力が嫌いだ、
毎日のように繰り返される乱闘の後、決まって暴力を批判する静雄を見てどうにかしてやりたい、と思っていた。
涙こそ流さないものの優しい心は深く傷付き痛んでいる事を思うとこっちまで胸が苦しくなってくる。
それに恋人として何もしてやれないってのはなぁ。
「なぁ、静雄」
「なんすか」
「今日は喧嘩しない、ってトムさんと約束してくれるか?」
そう言って小指を突き出せばキョトンと目を丸くして見つめ返してくる。
少し照れ臭そうな顔で俺と小指を絡め合って、物理的に実行すれば間違いなく死に至るであろう歌詞を弾んだメロディーで歌った。
まぁ静雄なら針千本飲んだってケロッとしていそうだが、それとも中は皮膚程頑丈ではないのだろうか。
どうでもいい事だとすぐに頭の奥へと追いやり、早速集金へと繰り出した。
今日は五、六件仕事があるがどれだけ我慢できるだろうかと不安に思っていた。
しかし静雄は俺との約束を守るべく、額に青筋を浮かべつつもどうにか力を抑え込んでいた。
おぉ、と感動しながらも我慢のし過ぎは体に悪いし、いつ静雄がキレてしまうかはわからないのでなるべく仲介に入って仕事を進めていく。
集金も一段落し、一度も乱闘騒ぎを起こす事なく仕事をこなした静雄を誉めちぎりながら通りを歩いていると、柄の悪そうな男達がこちらを睨んできている。
何とも分かりやすい嫌な予感に内心冷や汗を垂らすが、基本池袋の住人は静雄を見れば目を逸らしそそくさと道を空けるものだ。
どうか彼らもその類いである事を願ったが、嫌な予感は見事的中し、静雄に向かって荒々しい言葉を投げ掛け始めた。
集金の仕事相手とは違い、明確な悪意を向けて来る輩は余計に質が悪い。
しかもその殆んどが逆怨みときた物だから、この場合は静雄がキレるのも無理ないだろう。しかし約束をした手前、安易に喧嘩を買う事も出来なくなってしまった静雄が困ったように視線を向けて来たので、俺は静雄の手を取り反対方向へと駆け出した。
「とっ、トムさん!?」
「こういう時は、逃げるが勝ちだべ」
握った手はすぐに熱くなり、顔を見ずとも静雄が真っ赤になっているのが容易に想像できて不謹慎ながらも笑ってしまう。
走り始めて十数分、中々諦めない輩に段々と息が上がってきた。
何とか追手の目を盗み路地へと身を潜める。
幸運にも事務所の近くのようで、上手くタイミングを見計らえばこのまま会社まで戻れそうだ。
まだまだしつこく響き渡る足音にさらに路地の奥へ静雄を押しやった。
「静雄、大丈夫か」
「っ、はい、ありがとうございます」
静雄の方も多少息が乱れてはいるが、俺ほど疲弊はしていない。
奴等が諦めてくれるまで暫くかかりそうだ。
最悪俺が陽動でもすれば、静雄だけでも無事に返すことが出来るだろうか。
「トムさん、外どうなってますか」
「まだ結構いるからなぁ、今出てってもすぐ見つかっちまうぞ」
「そ…っすか」
背後から聞こえた声が震えているような気がして振り返ってみると、静雄はいやに情けない顔をしていた。
怖がっている訳でもないだろうしと不思議に思って、どうした?と聞いてみても何でもないですと返されるだけだった。
状況が状況なので深く追求する事もせずに、外へと意識を集中する。
静雄を抑える腕に力が入るが、無意識の為か後ろで泣きそうな顔をしている静雄に気付くのが遅れた。
「…?おい、静雄?」
「はっ、と…むさ」
「え、何どうした?」
薄暗くてよく見えないが、体を小さく震わせて唇を噛み締めているようだ。
何やら艶かしい姿だが如何せん突拍子が無い。
「なんだよ、マジでどうした?」
「っ…う」
「言えって、怒ったりしねぇから」
「ぃ…れ、っ」
れ?
上手く聞き取れず耳を近付けると、消え入りそうな声で一言。
トイレ、と。
静雄の顔を見れば長いこと我慢していたのだろう、真っ青なんだか真っ赤なんだかわからない顔色で汗を伝わせていた。
これは不味い、と一刻も早く楽にしてやりたかったがまだ外には不良共がうろついていて出ていけそうにない。
「おい、我慢出来るか?」
「…っ、…!」
弱々しく首を振った静雄を見て、これ以上隠れる事も出来ないと思い陽動作戦の実行を決心した。
「俺があいつらを引き付けるからお前その隙にどこでもいいから便所借りてこい、あわよくばそのまま事務所まで戻れ」
「む、無理…っす」
「そんなにピンチだったのかよ、なんでもっと早くに言わなかったんだ」
「ぁ…すい、ませっ」
「頑張れ静雄!お前はやれば出来る子だ」
出来る、自分を信じろ、諦めるな、出来る限りの応援をし、上手く行く方の可能性に賭けて通りに飛び出そうとする。
が、飛び出した矢先に見付かりそうな場所を、男の一人に陣取られてしまう。
この路地から出た所を見られてしまったらそれこそ意味が無いし、どちらにせよ俺の裾を掴む静雄の手が移動を許してくれそうになかった。
「いか…な、で、下さっ」
「おぉ、わかった、ここにいるけどよ…でも彼奴等がいなくなるまで耐えられそうか?」
答えはさっきと同じく無理、だ。
もう喧嘩でも何でもしちまって構わないから解放してやりたいのが本音だが、静雄的には既に一歩も動けない状態なのだろう。
俺としては立ちションだと思えば何も恥ずかしい事ではないと割り切れるが、恥ずかしがり屋な静雄はそうもいかなんだろうな。
それは実質的にこのまま漏らすのを待つ事しか出来ない、という証明であった。
「っトムさん、何、してっ…すか!」
「このままじゃ出ちまいそうなんだろ?」
身動きの取れない静雄のベルトを緩め、出来るだけ慎重に前に手をかける。
「ぁ、やめっ、…めてくだ、さっ」
「こうなったらもう後の事考えろ。前濡らしていかにも漏らしましたと主張して帰るのと、何も汚さずに帰るのとどっちがいいか」
「で、もっ」
「…言い方を変えるぞ、俺だけが知ってるのと、公衆の面前で濡れた下半身晒して噂になっちまうのとどっちがいい?」
酷なようだが静雄を納得させる為にはこん位言ってやらないとな。
脅すような事を言えばぴたりと抵抗を止める静雄に良い子だ、と頭を撫でる。
こうなれば後は出すだけだが、我慢の限界をとっくに越えてるくせして尚も堪え続けるのが静雄だ。
別に粗相見た位で幻滅したりする訳でも無いのに、本当に臆病な奴だよ。そんな所も引っ括めて愛しい。
「静雄、もう我慢しなくてもいいんだぞ?」
「やっぱ、俺っ…!」
「…あんまチンタラしてると、奴等に見つかっちまうかもな」
こんな所見付かったらそれこそ最悪なので、どこか諦めたような静雄の背後に回り壁の方へ向かせる。
弱々しくすがり付いてくる腕を無視して、後ろから自身をやんわりと掴めば息を飲む音が聞こえた。
「ほら、出しちまうぞ」
「やぁっ、あ、あ…っ!」
下腹部を強く押しながらパクパクとひくつく尿道を指の腹で撫でてやれば、チョロチョロと尿が溢れ出す。
一度出始めれば止められる筈も無く、せきをきったように排泄される。
静雄の足が濡れてしまわぬよう自身を持ち上げ壁へと向けるが、我慢し続けていたせいもあり勢いのある放物線は中々止まらない。
「ふぁ、あ、っひ、すいませっ、トムさ、っ」
「生理現象だもんな、仕方ねぇべ」
「っ、ぅあ、ふぅう」
身体から抜けきった熱量にぶる、と震えた静雄の自身に付着した尿を手で拭い取る。
濡れた右手をハンカチで拭くと、振り向いた静雄にそれを奪われた。
「すすすすんません!あの、これっ、あ、洗って返しますから!」
「いや、別に良いけどよ、もう平気か?」
「はい、全然平気、っす」
服を整えた後もすいませんすいません、と謝罪を繰り返す静雄はこの上無く羞恥に染まった表情だったもんだから余計に煽られてしまう。
こんな所で襲っても今なら許してくれそうだが、男共に見つかるリスクを考えると抑えた方が良さそうだ。
「…今度は俺が我慢する番か」
「はい?」
「いや、あ、静雄は今日マジで頑張ったな、嫌じゃ無ければ外の奴等ぶっ飛ばして発散してきたらどうよ」
濁すように通りの方を指差せば、少し考えたような面持ちをした静雄はそれでも俺との約束を優先してくれるのだろうか。
呟かれた言葉に緩んだ頬は薄暗さに隠れ、俺の威厳も削がれる事無く。
「今日は喧嘩しない、ってトムさんとの約束、最後まで守らせて下さい」
めでたしめでたしって訳だ
何がめでたしだと激しいツッコミ期待しております
椎名様リクエスト、小スカトム静でございました
トムさんが自ずと大人の対応を取りました
ただ小便堪える静雄が美味しいのは全国共通といいますか、素晴らしいリクエストでした
ついでに波静もお褒め頂けて光栄です
この度は一万打リクエストにご参加頂き誠にありがとうございました!