何かを探すように辺りを見回した。
しかし白い天井と頑丈そうな鉄の扉、見たことも無いような精密そうな機械が目端に入り不安を煽るだけの要素にしかならず首を戻した。
両腕ががっちりとしたベルトで寝台の様な物に固定されているのをどうにか引き千切ろうとしたが、何故だか力の入らない体に舌打ちをして事の進展を待つしか出来なかった。

間も無く扉が重厚な音を上げて開き、異なる複数の足音が聞こえて視線だけを横に向けると見知らぬ男達がぞろぞろと入ってきた。
白衣を着た者、スーツを纏った者。
特に白衣は記憶に新しく感じてふと腐れ縁の闇医者を思い浮かべるが、入ってきた男達はその闇医者よりも遥かに年輩で直接の関連があるとは思えない。
確証は無かったが勘がそうだと告げている。
それと共に認めたくない嫌な予感が俺を襲う。

「気分はどうかね、平和島静雄君」
「…」

知らない場所で縛り付けられて気分の良い奴がいたらそいつは変態だ。
無言で睨み付けて否定の意を示したが、意思の疎通が出来ているかすら分からない。


「…ここ何処なんだよ、あんた達が俺を拐ってきたのか」
「えぇ、私達の研究に是非とも協力して頂きたいと思って、ね」
「っふざけんな!」

何の研究だか知らないが、人拐いするような奴等の研究がまともな物である筈がない。
俺が動けないのを良い事に次々と研究内容を聞かせられるが興味など小指の甘皮程も持ち合わせていない。

「時に平和島君、貴方は非常に素晴らしい身体能力をお持ちだ」
「…俺をこっから出せ」
「その身体について調べれば医学の発展に繋がるのではないかと睨んでいるんだよ」

俺の身体が素晴らしいなんて、どの口が言いやがる。その歪んだ面を殴り飛ばしてやりたかったが、この力は肝心な時に封じ込められてそれも叶わない。
気付けば横たわる俺をぐるりと囲うように男達が立ち並び、余計に居心地が悪くなった。

「少し痛むかもしれないが研究のためだ、我慢してくれ。麻酔の注射針が刺さらなかったのでな」

そう言ってベストとシャツを開かれ腹にメスを置かれる。
折れるぞ、と忠告するべきかと思ったが既に男の腕は腹の上を通過した後だった。メスが辿った後からはうっすらと赤い線が現れただけで痛みも何もなかった。確かにこれは格好の研究対象なのかもしれない。

「メスをも通さないのか、益々君の身体がどうなっているのか調べたい」
「…切開が出来ねぇんじゃ何もわかんねぇな、早く解放しろ」
「いや、調べる方法ならいくらでもあるんだよ」

嫌な顔でニィ、と笑った男は助手のような男に耳打ちをした。
ここで何故かベルトに手を掛けられて下着もろとも脱がされる。拘束されていなかった足で蹴り上げてやろうと思ったが周りにいた男達に抑え込まれて成されるがままだ。

「お、おいっ…!」
「まずは精液採取、次に中から覗いてみるか」
「な…!?」

言うことを聞かない足を軽く折り曲げられ、その間から手が伸びてくる。
そのまま無遠慮に掴み扱かれ始めて思わず息を詰まらせた。

「な、なに…してっ」
「言っただろう、精液採取だよ…おや、随分と反応が早いようだね」
「ひっ、…ち、ちがっ」
「やはりその身体では性欲や食欲なんかも旺盛だったりするのか」
「っう、ぁ…く」

なんとか声を抑えようとしても、やたら上手い手付きに翻弄されてしまいそうになる。

「は、っあ…ん、ぅ」
「出来るだけ濃い方が良い、焦らしてやりなさい」
「っや、め、ひぁ」

あと何度か擦られたら駄目かもしれない、そんな時に根元をきつく戒められてやり場が無くなる。それでも扱く手は休む事無く動いて、ただ先走りだけが少しずつ先端から溢れ出す。
それすらも許さないと言わんばかりに尿道口を塞ぐように指で擦られ、いよいよ我慢ならない。

「そろそろ、辛くはないかね?」
「は、うる…ぁ、っせ、ひぁっ」
「ならもう暫くそのままでいてもらうよ」
「っや、く…ん、イき、たぁっ、ふぁあっ」

一度口から出てしまえば、耐えていたのが嘘の様に俺はイきたいだのイかせてくれだのを繰り返した。
言って快感が紛らせる訳では無いが、言わずにはいられなかった。
その間にも他の男達の手が身体中を調べるように這い出して、気分がおかしくなりそうだ。

「腹筋なんかは頑丈だが性器は一般と変わりないようだな…」
「ぅ、あぁ、っひぁ!」
「胸筋も発達しているようだが、乳首は…これはただ硬くなっているだけのようだ」
「ひっ、さ、わ…なぁっ、ぁっ、んあぁ!も…ひぁ、イきた、ん」

もう少し我慢してくれたまえ、等と言い暫くは解放する気が無いようだった。
自由にならないまま限界が続いてこのままではどうにかなりそうだ。

「もうそろそろ頃合いか、離してやりなさい」
「っあ…!?ふぅっ、ひ、ぁあああっ!」

声が掛けられたと同時に塞き止められていた物が解放されて、最後の一滴まで絞り出すように扱かれる。
足の間からビーカーに溜まっていく精液が見えて、嫌悪感に飲み込まれる。あくまで研究でしかない、と言った男の口振りがどうしようもない現実感を突き付けて来て泣きたくなった。

「では後ろの方に取り掛かろう」
「ひぁ…っ、な、に」
「アナルを触った事はあるかね?」
「ぁ、あな…っ?」

尻の割れ目に手を這わされ、初めてその単語の意味を知った。
普段直接触る事などあり得ない場所を、男達の指でつつかれて目を見開く。
一人が見た事も無い器具を持ってきて、それを穴に宛がい始めたので恐怖心から開いていた目をきつく瞑った。

「少し開かせてもらうよ、痛くないように慣らしながらするから」
「ゃ…っひ、ぁ」

いつもなら閉じている箇所が器具によって無理矢理開かれたのがわかる。
内部に直接外気が流れ込んで来る感覚に背中がじっとりと汗ばんだ。
恐る恐る目を開くと、少しずつ、隈無く探るような動きで指が入ってくるのが見えて現実とは思えない。
しかし瞼を焦がす熱い位の照明が思考の逃場すら奪って行く物だから、動かない身体でその現実を受け入れなければならなかった。

「内部はそこまで鍛えられている訳ではないのか」
「っん、ぁ、うぅ」
「中を覗いてみようか」
「っふぁ、ひ、っ!?」

男の手に握られていた黒くて細長い管が尻から中に入れられる。指より細い分スムーズに進むが、長さも指の比では無くて恐ろしい。

「これはね、中をモニターに映し出す事ができる体内カメラなんだよ」
「やぁあっ、うく、んぁ、っん」
「はは、奥に当たって擽ったいようだね」
「ひぁっ!そ、こっ、ゃ、うぁあっ」

何度か出し入れされた後、少しずつだが奥へ奥へと進んでくる。
柔らかい管の先端には少し出っ張った固い物が付いているようで、進む度に内側に擦れて息が引きつった。

「っは、ぁ、やぁ…も」
「あと少し先も見せてくれるかね」
「あぁっ!ぁ、あっ、ふかっ、いぃ…やぁっ!」
「もう少し上、奥も…」
「んぁあっ、やだっ、ゃあぁっ、あ、っひぁあっ!」

もう進める筈の無い所から更に奥に捩じ込まれる。
尻というよりは既に腹部に違和感を感じる程に奥まで差し込まれた管。
目から涙が落ちるのも構わず抜いてやめてと喚いても、男達は聞く耳持たず俺の腸内が映し出されたモニターに釘付けになっている。鍛えようの無かった体内に入り込んだ異物がぐるりと中で動き進む毎に、序盤では無かった激痛が俺を襲い始めた。

「ぁあ゙っ、ひぅ、ぐ」
「これだけ人間離れした肉体だというのに中身は普通か、驚いたな」
「はぁっ、ぃ、だぁ、あ!ぁっ…っ!」



その後も男達の欲望のままに好き勝手されて、意識の飛ばせない俺には拷問のような仕打ちばかりだった。
気の済むまであれこれ試された身体はついにぴくりとも動かなくなり、後を追うように思考する気力も低迷していく。
疲弊から気を失う最中で、明日はこれをしよう、ああしたらどうだ、なんて研究者の戯れ言が耳に滑り込んできた。
良い眠りなんて物は得られそうもない。








企画:シズ犯様に身体検査のお題で提出させて頂きました。



第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -