▼ 終. 白無垢の涙は歓喜に変わる
「あるじどのー!」
「はーい!」
執務室で時間を待っていた楪は廊下の奥からの呼びかけに腰を上げた
この本丸を託されて初めて行った鍛刀、円香から方法は聞いていたものの実際にするとでは全然違ったが、上手くいったと良いのだが
「新しい刀、どんな刀かな?」
「……」
「鳴狐?」
二振り目となる刀剣男士との対面を前に浮足立つ楪を呼び止めるように、鳴狐は彼女の手を握り止めた
鳴狐に呼び止められる様に繋がった手を見つめ、首を傾げる楪に鳴狐は一言
「…ゆずには鳴狐だけだ」
「髭切さんが嫉妬は良くないって…」
「その号は、出さないでほしい」
「いやはや…以前からあるじどのには心を許しておりましたが…」
極となってからの鳴狐はお供の狐を介さず、楪に良く自分の意思を自分の言葉と声で告げてくれるようになった
それだけでなく、楪から改めて「お嫁さんにしてほしい」と約束し直された日からとても楪に対して、構う様になったと思われる
「──はじめまして!この本丸の主です、彼は私の近侍の鳴狐!貴方の名前は?」
屋根に残った雨粒が太陽の光を浴びて、宝石の様にきらめいた