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「そういや夜久がデュエルするって聞いた時、クラスの奴ら、凄ぇ食いついてたのに誰一人来てないんだな
何か知ってるか?ヨハン」
「んー…あ、氷那のデュエルが見たかったら俺と宝玉獣に勝ってからな、って言ったら、皆が顔真っ青にした事と関係あるか?」
「ありまくりだよ、寧ろお前のその言動が理由だよ!」
「だって氷那がまだここの皆にデュエルする所、見られたくないって言ってたの思い出したからさー!」
氷那が編入してくるまでは女子というものに目移りもせず、デュエルに没頭していた友人の変化にアルフレッドはたく、と呆れた様に溜息と共に言葉を零す
行き過ぎた言動だというのに当の本人はそれを悪びれた様子もないので、尚更質が悪いという事もきっとヨハンは知らないのだろう
(コイツ、自分が夜久にどんな想い抱いてるのかさえ知らねぇんだろうな…)
これは先が長くなりそうだ、そう胸で呟くに留まったアルフレッドは目先で展開され始めたモニカと氷那のデュエルに集中する事にした
「先攻はわたしが貰いますっドロー!手札の『ハーピィ・クィーン』を墓地に捨てる事でデッキから「ハーピィの狩場」を手札に加えます、そして…『ドラゴンフライ』を召喚します!」
ドラゴンフライ ATK 1400/DEF 900
「ターンエンドです!」
「そんなに飛ばしてデュエルも性格も疲れないのかしら?私のターン、ドロー…私は『霊滅術師 カイクウ』を召喚」
霊滅術師 カイクウ ATK 1800/DEF 700
「バトルよ、『霊滅術師 カイクウ』で『ドラゴンフライ』を攻撃」
「きゃっ」
モニカ―LP:3600
「ここで『霊滅術師 カイクウ』がモンスターを破壊した事で効果発動、貴女の墓地のモンスターを2体まで選択してゲームから除外させてもらうわ
更にこのカードが場上に表側表示で存在する限り、相手はお互いの墓地のカードをゲームから除外出来なくなる」
開始ダメージを通したのは氷那、彼女の場の霊滅術師 カイクウはドラゴンフライを容易く葬ると更にモニカへと追い打ちをかけた
LPに微かな差を与え、モンスターを撃破しただけに留まらず、コストとして送ったハーピィ・クィーンでさえも除外され、モニカは少なからず衝撃を受けざるを得ない
「ええっ?!わ、わたしのハーピィちゃんが…!でもこっちだって破壊された『ドラゴンフライ』の効果発動ですよ!
このカードが戦闘によって破壊され、墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の風属性モンスター1体を特殊召喚しますっ
わたしはデッキから…『ハンター・アウル』を特殊召喚です、そしてこのカードは表側表示で存在する風属性モンスター1体につき、攻撃力が500Pアップするんですよ〜」
ハンター・アウル ATK 1000→1500/DEF 900
「カードを2枚伏せて…ターンエンドよ」
「わたしのターン!ドローです!クィーンがやられたのは痛かったですけど…負けませんよ?わたしは『ハーピィ・チャネラー』を召喚!そして効果発動ですっ」
「「手札から【ハーピィ】と名のついたカード1枚を捨てる事でデッキから『ハーピィ・チャネラー』以外の【ハーピィ】と名のついたモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する」」
「っ…?!は、はい、 私は手札から『ハーピィ・レディ3』を墓地に捨て、『ハーピィ・レディ・SB』を表側守備表示で特殊召喚です!」
ハーピィ・レディ・SB ATK 1800/DEF 1300
両腕から美しい翼を生やす美麗な一面を持つと同時にそれを打ち消さんとばかりに巨大なかぎ爪状の手は大きく存在し、鋭い眼光はこちらを射殺さんとばかりに輝く
悠長な観察をする氷那の場のモンスターを上回るモンスターがモニカの場に現れてしまった、そんな状況下でも彼女の口から溢れるのはサヴァンとしての言葉だった
「風属性モンスターが増えた事で『ハンター・アウル』の攻撃力も上がる」
「はい、その通りです!そして更にぃ…フィールド魔法「ハーピィの狩り場」を発動です
場上に表側表示で存在する鳥獣族モンスターは攻撃力と守備力が200Pアップですよ♪」
ハーピィ・チャネラー ATK 1400→1600/DEF 1300→1500
ハーピィ・レディ・SB ATK 1800→2000/DEF 1300→1500
ハンター・アウル ATK 2500→2700/DEF 900→1100
「…」
「あっという間に窮地に追い詰められたのに随分余裕なんですね?さっきの言動からも思いましたけど、流石《魔女》ですね」
「《魔女》、ね…」
一々魔女、と言われても氷那は慣れた風に相手からの挑発を受け流す
彼女は知っている、ヨハンやあの兄妹の様に自分を肯定してくれる人間ばかりがいない事を、だからこそ…慣れなければいけないのだと
自身の挑発に噛み付いてもこず、冷気さえも感じる冷静さと瞳がモニカへと恐怖を送り返していた
「っ…バ、バトルです!『ハンター・アウル』で『霊滅術師 カイクウ』を攻撃っ」
「…」
氷那―LP:3100
「『ハーピィ・チャネラー』で先輩にダイレクトアタックですっ」
「伏せカード、オープン。罠発動「魔法の筒」
攻撃モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与えるわ」
「な…っきゃあ!」
モニカ―LP:2000
氷那の場に伏せられたままのカードが起き上がり、そこから派生した二本の筒の片方はハーピィ・レディ1の攻撃を飲み込むともう片方の筒からカウンターとして返された
跳ね返ってきた攻撃によってモニカと氷那のライフ差は1100、まだ勝利がどちらに転ぶか分からない数字だ
「ひゃー…こっちまで冷や冷やするぜ、氷那のデュエル」
「まあ結構良い具合に進んでるんじゃねぇか?流石《氷鎌の魔女》、ここまでとは思わなかったぜ」
「へへ、そうだろー氷那、すっげぇ強いんだぜ?アルフレッド!」
「現在進行形で見てるから分かるっての、つーか…お前が威張んな!」
「何で怒るんだよ、アルフレッド!」
「(何やってるのかしら、外野は) …私のターン、ドロー」
背後から聞こえてくる友人達の声に氷那ははぁ、と溜息をつくと明け渡されたターン内の為にディスクにセットされたデッキ上からカードを引き抜く
引き抜いたカードを手札に加え、現状と手札を確認すると直ぐさまに行動へと移った
「私は『月読命』を召喚」
月読命 ATK 1100/DEF 1400
「先輩、そんな攻撃力じゃわたしの場のモンスターの足下にも及びませんよ?」
「そんなの重々承知よ、それに…モンスターは攻撃力で全て決まるものじゃないわ
『月読命』のモンスター効果発動、このカードが召喚・リバースした時、場上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、裏側守備表示にする、私は『ハンター・アウル』を選択」
「えっ?!」
「更に伏せカード、オープン。罠発動「リビングデッドの呼び声」、この効果で破壊された『霊滅術師 カイクウ』を特殊召喚する、戻ってらっしゃい」
霊滅術師 カイクウ ATK 1800/DEF 700
2体のモンスターの攻撃力ではモニカの場に存在するモンスターには太刀打ち出来ない、それを知ったモニカはくすり、と嘲笑っていたというのに『月読命』の効果で表情は一変
彼女の生まれ故郷の神話内の神をその身に持つモンスター、そしてこのターンの前にあえなく破壊されてしまった霊滅術師 カイクウが再び氷那の場に参じる
「バトルよ、『月読命』で『ハンター・アウル』を攻撃
更に手札から速攻魔法「月の書」を発動して『ハーピィ・チャネラー』を裏側守備表示に変更、『霊滅術師 カイクウ』で裏側守備表示となった『ハーピィ・チャネラー』を攻撃するわ」
「そ、そんな!」
「そしてこのエンドフェイズ、『月読命』は手札に戻る…カードを2枚伏せてターンエンドよ」
「モンスターが強いってのは攻撃力だけじゃなく、その効果もあってこそ言えるものなんだよな
氷那はそれを証明したって訳だ」
「攻撃力が高くて太刀打ち出来ないなら守備力を叩く…何か日本人らしい細かい行動だな」
あれ程までに優勢を誇っていた自分のモンスター達が呆気なく粒子となり、墓地へ消えてしまい、モニカは唖然となってしまう
(強い…これが《氷鎌の魔女》って呼ばれる夜久先輩の力…!でも、それでもわたしは…ヨハン先輩の隣にいる先輩を倒したい!)
「まだこれからですよ…!わたしのターン、ドローです!」
彼女のそれは一種の意地だ、啖呵を切ってきたのはこちらなのに、最初に彼を好きになったのは自分なのに…様々な想いがモニカを支えていた
そして主の想いに応える様に彼女のデッキも応えてきたのだった
「来ました!念願の『ハーピィ・クィーン』を攻撃表示で召喚ですっ
『ハーピィ・レディ・SB』を攻撃表示に変更して…装備魔法「サイバー・ボンテージ」を『ハーピィ・クィーン』に装備!この効果により、『ハーピィ・クィーン』の攻撃力は500Pアップします!」
ハーピィ・クィーン ATK1900→2600/DEF 1200→1400
「場に『ハーピィ・レディ』が召喚されたので「ハーピィの狩場」の効果を発動します!先輩の場に伏せられたカードの1枚を破壊します
…行きます!『ハーピィ・クィーン』で『霊滅術師 カイクウ』を攻撃です!」
「伏せカード、オープン。速攻魔法「ディメンション・マジック」を発動、自分場上に魔法使い族モンスターが存在する場合、自分場上のモンスター1体を選択して発動出来るカードよ
選択した自分のモンスターをリリースし、手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する…私は場の『霊滅術師 カイクウ』をリリースし…手札から『氷の女王』を特殊召喚する」
氷の女王 ATK 2900/DEF 2100