起立、礼、着席 | ナノ



「あれ、まだ起きてたの」


 濡れた髪をタオルで拭く臨也くんの声で正気に戻る。午前2時、もうこんな時間だったのか。


「ん、あと1時間くらい」

「いまさらやったところで悪あがきなのに」

「その悪あがきが赤点を免れるの、頭のいい臨也くんにはわからないよ」


 訪れた沈黙に顔をあげればノートを覗いていた臨也くんと目が合う。赤い瞳の奥に烟るものに寒気。ああ、やな予感、


「テスト前日は早く寝た方がいいらしい」

「は?」

「だから。寝よ」

「‥な、ちょ、」


 強引に手首を掴まれて寝室まで引きずられる。ベッドが軋んで降ってきた接吻。明日はテストだというのに流されて、結局、勉強も進まないまま朝を迎えた。







「臨也くんのせいだからね!」

「なにが」

「臨也くんがあんなことするからテストぼろぼろだったの!」

「そんなに気持ち良かった?」

「ば、‥っかじゃないの‥!しね!土に還れ!臨也くんの変態!地獄に堕ちろ!」


 コーヒーカップを置いた男は愉しそうに笑った。




起立、礼、着席




「きゃあああ!臨也くん、60点!60点!」

「じゃあもう我慢しなくていいよね」

「は?ちょ、なに、舐めっ」

「待てない」


 ごちそうさまでした。



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