すきだとか、愛してるとか、それが真実だと証明できるものもないのにどう信じろっていうの? 「すきだ」 「ダウト」 「‥‥なに?」 「あなたがわたしに好意を抱いた理由を述べて」 「‥や、優しくて、可愛くて、俺が護ってやりたいと思った」 「証明してみせてよ。あなたのわたしに対する想いを、いま、わたしに伝わるように」 目の前で狼狽する男をひどく冷たい目で見遣る。わたしは人生のなかで、告白されたのと同じ回数、この科白を声にした。問われた男はいつだって誰だって、こう答えたものだ。 「死ぬほど、愛してる」 あーあ、興ざめ。 「じゃあ、死んで。今すぐ」 所詮、こう言えば死ぬまでもなくわたしに愛情なんてなくなるんでしょう、嘘つき。 ごめん、なんて残して去った男の消えた方角に視線を向けたままひとつ、嘲笑。ほらね、やっぱりその辺のひとと変わらなかった。今日を限りにあの男がわたしに連絡をしてくることはないだろう。廊下ですれ違っても、きっと素知らぬふりをされるだけ。 ああ、今日も暑い。水風呂にしようか、そう考えながら身を翻そうとして、停止。 「やっぱり期待通りだ」 「‥‥‥だれ」 「俺のことなんてどうでもいいよ、きみはいつからそんな狂気にまみれてるのかな」 「暇じゃないので失礼します」 「愛されたいんだろ」 横を素通りしたわたしの背中に突き刺さる言葉。すう、と。脳が冷えた音がして、数秒。背後に迫る気配に恐怖を隠せない。いま、この男は、なん、て 「俺がきみを愛してあげる」 耳のすぐ近くで囁かれた音は、わたしの鼓膜を震わせて、融解。 タイムキラー 愛を求めていた。いつからわたしは狂ったのか、いまではもうわからない。ただひとつ、有り得ない「永遠」を手にしたかっただけ。 ×
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