一週間 | ナノ


 もう夜明けが近いのか覆われた白の切れ目で空は群青に染まっていた。大きな建物が並ぶイタリアで2番目に大きい都市カターニア。留学する前からここに来てみたいと思っていたけれど(それも大切な観光マップに赤丸をつけるほど!)、観光している暇なんてあるわけがない。
 勢いでこんなところまで来てしまったけれど、今さらながら後悔しかけているなんて自分でも呆れる。列車代は姐様からのお小遣いでなんとかなったものの、帰るときのことは何一つとして考えていなかった。そして万が一あのマフィアのアジトに戻れたとしても、逃亡した一般人を、アジトの場所を特定してしまった一般人をザヌススさま‥ザンザスさまは生かしておいてくれるだろうか。そんな問い解りきっている。答えは否だ。


 走ることで四肢の震えを制す。どうせ帰る場所も方法もないのだから帰り道を覚えていても無駄というもの。わたしはただ、一目。彼の無事をこの目で見るためだけにここまで来たのだから!
 閑まりかえった街角をまた曲がる。交差路ばかりで変わらない街並みはまるで迷路。ああかみさま、もうサタンでもなんでもいいから。彼に、逢いたいのです、逢わなければならないのです。ぽつり。応えるように天はわたしの鼻の頭に雫を落とした ような、気がした

 拭ったその雫が赤いことも、知らず


「‥名前?」


 ねえかみさま。図々しいけどもうひとつお願いしてもいいですか。あと数分、ううん、ほんの数秒でいい。わたし、に 心の準備をする時間を、ください。


 振り向いた視線の先には、朱にまみれた金糸。




 もう諦めかけていたのです。叶わぬ望みなのだ、と。期待し希うだけの虚しさを、わたしは厭というほど学んでいたのだから。もう傷付かないように張った防衛壁は、それ故に叶った歓喜に弱かったのです。






確かに愛を知った日曜日



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