一週間 | ナノ


 念願だったイタリア留学。学校では毎日四時間イタリア語の勉強をして(授業なんかほとんど聞かない!)放課後は留学資金を貯めるためのバイト三昧。疲労のとれない日々だったけれど憧れのイタリアへ行けるならそんなの気にならなかった。しぶる親や先生に何度も頼み込んでついにいまイタリアの空港!感動で前が見えません世界が滲みます。ああなんか外が騒がしい気もするけどイタリアじゃそれが普通なのかも、しれな

 一気に涙はひいて目を見開く。ななななんなんだこれ!あちらこちらで爆発が起きて人間らしいものが次々に空に舞い上がる。わたし以外のひとたちは悲鳴をあげて逃げていたけど頭が真っ白で動けない。や、映画の撮影?だってだって有り得ないでしょいくらイタリアがマフィアの聖地だからって空港の前でこんな抗争なんて有り得ない。警告を鳴らす脳に反応できず空から聞こえた何かの落下音にも気付けなかった。





 からだの節々が痛む。いまではあの騒ぎは嘘のように静まり返っていて夢だったのかと目を開ける。そして目に入ったのは一面の灰色。脳は急速な覚醒。床も壁もコンクリートがむきだしで冷たい、そして何よりこの鉄格子の意味を知りたい!何故わたしはここにいるんだ!というかここはどこだ!落ち着けと自分に言い聞かせるがこれが落ち着いてられるか!脳内は完全なるパニックに陥って理性の言うことを聞いてくれない。いくらばかなわたしにだって解る。牢。わたしは監獄にぶちこまれているのだ。理由なんてこっちが訊きたい。わたしなにかしたっけ?入国だってちゃんと正規の手続きをとったし国籍だってあるしましてやハイジャックとかそんな犯罪おかした記憶もない。じゃあ何故いまわたしはここにいる?


「起きた?」

「!」


 なんの物音もせず鉄格子の向こうにいきなり現れた人影に無意識に身体が強張る。反射的に向けた目でとらえたのは前髪で顔の見えない男。あたりが暗くて良く見えないが金髪だろうか。その口しか見えない彼の満面の笑みに全身を走った言い様のない恐怖。

 不意に何かが空を切って後ろの壁に当たった。リズムよく連続でなった金属音。頬に手をやればぬめりとした感触と振り返った床に散らばる四本のナイフ。今起きたことを理解するのに時間はかからなかった。

 殺される

 戦慄。実力に圧倒的な差があるなんて子供だってわかる。元々そんな方向の能力に長けていないわたしじゃどんなに弱い人間でも殺せないだろう。再びすらりとナイフを構えた目の前の男のひとを最後に瞳にうつして目を閉じた。


「あんたさあ階級なに?」


 そんなんだしどうせ準構成員になってるかどうかも怪しいけどさ。
 …階級?準構成員?なんだそれは。学年を訊いているのか?そして脳に浮かんだのはマフィアの四文字。ああそうだ確か役職の名前に準構成員なんてあった気がする。じゃあなんだ、わたしはマフィアだと勘違いされているのか。なんていう最悪な事態。道理でこんな監獄部屋に閉じ込められるわけだ。脳内で自問自答を繰り返しとうとう焦れを感じたのかナイフがひとつ足元に刺さる。とんでもない痛みで我に返りそれをはなった人物を見上げた。


「王子無視とかなめてんの」


 わたし日本の一般人なんです、はたから聞いたら逆に怪しまれそうな単語が次の瞬間には口に出ていた。


曖昧に始まる月曜日



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -