一週間 | ナノ


 




「だからやだったんだよ、おまえの世話」




「え?」

 ひゅん、何かが横を過ぎ去る音がして背後の警備員は重力に負けた。俯いた顔をあげることが出来ない。そんな筈無い、こんなところにいる筈が無いのだ。なのに、なのにわたしの聴覚嗅覚視覚その総てが彼だと肯定する。そう、まるで


「ゆめ」

「王子の仕事増やすなよ、おまえのせいでオレジャッポーネに飛ばされたんだぜ」

「、べる」

「あ?」

「ゆめじゃない‥!」


 飛びついた彼の背中に手をまわす。あたたかい。生きてる。ほんもの。ほんとうに、ほんとうに焦がれていたあなたなのだと。


「行くぜ」

「あ‥わ、わたし、警察に行かなきゃいけないんです。パスポート偽造したの、ばれちゃっ、て」

「バァカ、逃げんだよ」


 帰んぜ、イタリアに。そう伸ばされた手を握ったのは、反射なんかじゃない。



 自分が何より大切だった。自分が助かるのならほかの誰が損をしても構わない、と。だから今日わたしはあのひとの傍にいるために、自分の大切な家族を、自分の生まれ育ったこの街を、表社会で生きる権利を、棄てる。


世界の変わった七日間



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