一週間 | ナノ


「名前ちゃん、先生が呼んでたよ?」


 という京子(校内一の美少女!)の言葉と重なるように流れた放送。内容は同じ。呼び出しを受けて気分が良くなる人間なんて、殆ど皆無であるとおもう。わたしは阿呆だけれど、馬鹿ではない。つまり、いま。この通達と放送をとてつもなく無視したい。


「‥う、ん、ありがとう」


 おっかしいな、今日星座占いも血液型占いも一位だったのに!



 一年前に奥さんと離婚したときと同じくらい深刻な顔をした先生がわたしの前のイスに座る。わたし何をしたの。もしかして先生の大事にしていたピンセットを曲げたのばれちゃったかな。前にシャーレを割っちゃったとき居残り清掃やらされたけど、そんなのきっと比じゃない。
 ああ先生、せめて雨樋の掃除だけは勘弁し、て


「警察が来てる」

「‥‥‥え、?」






「不法入国の容疑がきみに掛かってるんだよね、ねえきみ。イタリアに留学して、」


 帰ってきたときのパスポート見せてくれないかな。

 心臓が止まった、気がした。






 体内を流れる血液がうるさい。なんでばれたの?何故。何故。偽造されたあのパスポートはきちんと了ってあるはずなのに、どうして。
 一時間後に家宅捜査を始める、と。刑事さんはそう言った。ひとり取り残された生徒指導室を出れば、扉の傍に待機していた警備員が後ろにつく。視界がゆれる。真っ白な頭。


 あのパスポートだけが、唯一のつながりなのに


「  」


 呼んだ名前は、空気に融けた。







世界の変わった七日間



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