「寝てただけ?」 「漫画読んでてよ!寝てねえんだ、睡魔に負けた」 「ばかじゃないの、織姫に心配させないでくれますかしら」 すまん。へらりと笑う彼を一瞥し まったくだけど織姫に謝れよ、と笑い返す。 ねえ今自分が何言ったか分かってる、一護。昨日トラックが一護の家に突っ込んできた時あんたは起きてた、そう言ったのと同じなんだよ。起きてたのに気付かなかった、そう言ったのと同じなんだよ。 「おかしいよ」 「ん?」 「何でもない、夜ご飯食べて帰っていい?」 ばか。馬鹿なのはわたしだ。一護がわたしに嘘なんてつくはずないじゃないか。きっと漫画読んでる途中で気付かないうちに寝ちゃったんだ。その間にトラックが突っ込んできたって考えるのが一番有り得るじゃないか。一護を疑うなんてどうかしてる、神経質になってるに違いない。 「ごめん一護」 「今更遠慮すんなって」 「ううん、ご飯のことじゃなくて」 「は?」 明日にはみんな、みんな、元に戻っていますように。 「押し倒す!」 織姫の口から噴き出された麦茶が絨毯に染みをつくる。いきなり何を言い出すかこの子は!乳でも掴ましゃやら襲ってくるやら何やらたつきとは思えない爆弾発言。 「トイレ借りるね織姫」 まったくもってついて行けない。よっこらしょと言いながら立ち上がり部屋を出る。たつきにおばあちゃんかお前は!と笑われた。 外の空気は落ち着く。わたしは空座町が好きだ。建ち並ぶ家も飛びまわる鳥も吹きすさぶ風も、一護や織姫やたつき、小島浅野茶渡。ともだち想いのいい人ばっかり。就職も出来ることならこの町でしたい。らしくもなく深呼吸をした、とき 「!?」 ドン!という激しい音。なに?爆発?今何号室から聞こえた?202‥ 織姫の部屋! 「織、っ」 オレンジが、見えた。家の向こう側、屋根からのぞいた月に輝くあいつの頭。そして、声。わたしがあいつを間違えるわけない。一護。 力が抜ける気がした。 |