禁じられたクライシス | ナノ


 どうやら転入生が来たらしい。可愛らしくて大人しくて言葉遣いが綺麗な、一護の隣の席の女の子。名は


「朽木ルキアですわ」

「よろしく!」


 引っ越して来たと小島が言っていたがわざわざこの空座町に来るなんてとんだ物好きがいたものだ。いや親の転勤かなあ。
 あと一分で本鈴がなるというところで一護が朽木に「外へ出ろ」というアイコンタクト。まさか朽木が初対面の筈の一護とアイコンタクトができるとは。

「あれ?黒崎と朽木はどうした」

「越智さん!朽木は保健室で一護はサボりです!」

「そうかそうか黒崎は余程呼び出されたいらしいな」


 まだこのときは

 あんなことになるなんて思ってもみなかったんだ



 とうとう四限目も終わったが幼なじみのあいつとその隣の席は変わらず空席だった。どうしたんだろうね黒崎くん、と織姫がたつきに話し掛けているのが聞こえた。たつきはいつものことだしそのうち帰ってくるよ、と頬杖をついた。本当に帰ってくるのかな。わたしたちのいる、この、教室に。


「センセー!黒崎くんが倒れてまーす!」


 ぽろり、と。握っていたシャーペンが手からこぼれた。全開にしてある窓から入って来た声はわたしの鼓膜を震わせる。倒れてる?誰が。黒崎が?黒崎って誰?

 一護?


「名前ちゃん?」

「あ‥ごめん、なんの話だっけ」


 今日は厄日なのかもしれない。でももしかしたらただの気のせいかも。トラック事故の矛盾、時期はずれの転入生、初対面のアイコンタクト、そして一護の横臥。ただ偶然、気になることが重なっただけ。そうだといい。これからもずっと今までと変わらない、毎日が意味分からなくて楽しくて馬鹿みたいな日々を送れると。絶対に送れると信じていたかった。


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