みじかい | ナノ



 ガガ、ピー。警告警告。


 わたしにこの血が流れていることをどれだけ嫌悪しただろうか。大昔、気に入らなくて気持ち悪くて全部無くなれば良いと深く切った手首の傷口を水道水にさらし続けたことがある。水に雑ざるその色が忌ま忌ましくて厭わしくて、あのとき阿鼻叫喚する母に止められなければきっと息絶えていたことだろう。


 それくらい嫌いだったはずだった。




 咳と共に血を吐き出す。昼間っから薄暗いこの倉庫の地べたは随分と冷たい。3メートル程離れた位置に残る真新しいブレーキ痕に舌打ちひとつくれてやったところで鉄の味に自己嫌悪。
 さて、今日の占いは何位だったのだろう。


「くだらない、」


 これは自己満足。散々無下に扱ってしまったあいつへの、わたしからの自分勝手なお節介。ああ、ノイズノイズノイズ。


「なに、してんの」


 ガガ、ピー。警告警告。

 いまのわたしと同じ靴に同じインナー、同じコートのその男。最後に顔を見たのはいつだったか、しばらくぶりに合わせた目はやはりわたしと同じ色をしていた。


「あんた何してんだよ、馬鹿じゃないの、今さらなんなんだよ」

「おりはら」

「なあ頼むよ、頼むから、」


 死ぬな。ぽたり、上から落ちてきて頬をすべるそれを拭うこともできず受け入れる。今まで何度泣かせたかしら。ここ十年はめっきり見なかった涕に笑んだ。

 ねえ、おりはら。
 わたし、




「ねえさん」









 あんたに良く似ただいっきらいなこの顔で。だいすきなあんたの身代わりに死ねるなら、本望だわ!








折原姉設定。自分が大嫌いで仕方なくて自分の顔に良く似た臨也に散々冷たくしていた彼女が臨也に変装して身代わりになった話。


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