机の中からあらわれた黒猫の死体。ひどくつめたいその亡きがらを見つめる。そして両手で抱きしめて、泣いた。 「可哀相にねえ」 驚きで肩がはねる。声の主を確認するために振り返ろうとして、やめた。分かってしまったから。 折原臨也だ、と。 「勘違いしないでくれよ。可哀相なのは君じゃなくて君に嫌がらせするためだけに殺されたその猫だ」 「やめ、て」 「そもそも君が半年前に彼女達に逆らわなかったらこんなくだらないいじめに巻き込まれずにすんだのに‥‥ああそうだな、分かりやすく言えば君に殺された、ってことかな」 「臨也くん!」 「そう悲観的になるなよ」 くつり。喉の奥でわらった彼を見遣る。わかりやすい含み笑い。腕の中の黒猫をきつく抱いてしまったことにも気付かず、黒い男を睨む。 「‥臨也くんは全部知ってたんでしょう、ううん、見てたんでしょう!この子が殺されるところを!なのに黙って傍観してたんでしょう!‥きらい、臨也くんなんてだいっきらい!」 嘘、嘘、全部うそ。こんなこと言うつもりじゃなかった。総て知ってるように話すのはいつもの臨也くんの癖で本当はほんの欠片しか知らないのに。臨也くんのこと、きらいなんかじゃない、のに、 「期待はずれだ」 「!‥」 「君はもっと冷静な人間だと思っていたよ。つまらないな、時間の無駄だった」 「わたしは臨也くんの駒じゃない!」 「知ってるよ」 だから期待はずれだと言ったんだ。 臨也くん。 わたし、臨也くんがわからないよ。 雑駁 「あーもしもし、俺だけど。あの子にはもう手出さなくていいよ‥‥うん、そう。やっと壊れてくれそうだからねえ」 うん、そう。 やっと俺のものにできそうだからねえ。 |