みじかい | ナノ



 最近はまってしまったことがある。小遣い稼ぎにもってこいの高時給単純作業のアルバイト。メリットばかりで最高のバイトだ。デメリットはただひとつ、ピルを飲まなきゃいけないこと。


 先々週みつけた良スポット、池袋駅の近くの少しばかり薄暗い通り。リーマンやOL、学生、もちろん主婦なんてこんな通りに近付こうとさえしない。女と接点なさそうな男たちの集まるここは、わたしにとって宝の山にも等しいのだ。

 その日たまたま声をかけた男はその通りでは稀にみる同い年くらいの若いイケメンだった。社会人ではなさそうな上、女に不自由してそうもなくてハズレだったと思えば、まさかの了承をもらった。近くのホテルに入ってシャワーを浴びる。まさにラッキーとしか言いようがない。あんなイケメンとやることができるなんて!






「はい、約束の3枚」


 情事後にブランド物の高そうな財布から渡された三万に笑顔を返す。どこかのお坊ちゃんなのだろうか、金を惜しむ様子は一切ない。既に着替えを済ませていた男はさっさと扉に向かった。


「またね」


 男の声が、いやに鮮明だった。






 翌日。昼休み、どこかから聞こえた窓ガラスが割れる音。来神では有名な問題児。またあの人たちかとどこか他人事に思っていた。
 その人が、わたしの教室に現れるまでは。


「――やあ、また逢ったね。昨日ぶり」


 ひとつ上の学年にとんでもない域の問題児がいることは知っていた。ただ、顔だけは見たことがなかった。

 だから。気付かなかったのだ。

『とんでもない域の問題児』のひとり、黒髪短ランの『折原臨也』は、紛れも無く。昨日わたしと寝た男だった。



過客




「未成年が長期に亙って援助交際、それも進路が決まる高校時代に、不特定多数の大人と。相手に対する犯罪誘発、これは立派な職員会議ものだ。退学になるかもねえ、そしたら君の厳格な両親はどうするかな」

「あ、‥お、りはらせんぱ」

「心配することはないよ、俺は先生に報告するつもりはないからね。‥‥今のところは、さ」


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