ベルはずるい。ほんとうにずるい。 「何?」 「ううん、なんでもない」 あっそ。そう呟いた彼の金髪が揺れた。髪から滑り落ちる水滴が床を濡らす。 「‥だから何だよ」 「んーん」 「じゃあ見んなって」 「だめ?」 「‥‥」 ああずるい。イケメンは何をしてもイケメンで、舌打ちさえも格好良くて、雨にしても風呂にしてもとにかく濡れただけでイケメン度が数千倍にも膨れ上がる。ずるい。イケメンはずるい。わたしだって可愛くなりたいのに。 「気が散る」 「集中しなきゃいけないことなんてやってないじゃない」 「王子の髪は集中しねーとクオリティ保てねーの」 「なにそればかみたい」 「言ってろ」 「いたっ」 彼の癖のでこぴんも、ほら、今の、髪をかきあげる所作も、動作のひとつひとつがわたしの愛を深くさせてるなんてきっと彼は気付いてないんだろうなあ。 「ベル」 「なに」 「‥すき」 「‥‥‥‥なにおまえいきなり」 「えへへーなんとなく」 「あーもう馬っ鹿じゃねーの、お前のせいで勃ったんだけど責任とってくんね」 ずるい 「‥え、ばか、なに言ってんの、風呂入ったばかり」 「知らね、お前が悪い」 「やだやだ来ないでイケメン!」 「‥‥なにそれ」 「ううう、任務に遅刻しても知らないんだから」 「あっは、じゃあさっさとイかせてやるよ」 「!」 「かわい」 |