「折原って寂しがりやなの?」 問うた直後、訊かれた彼は豆鉄砲でもくらったような様子でこう言った。 「は?」 学校中で噂されている「関わってはいけない人物」のひとり、折原はわたしの友人である。‥いや、語弊だ。わたしが一方的に友人だと思っている。その折原が何故関わってはいけない人物なのか、彼の「趣味」を訊けばわかりやすいのだが、その趣味とやらが情報売買なのである。ちなみに、世間一般では決してこれを趣味とは言わない。 「何それ何のギャグ?」 「あははは冗談だよ、だからそのナイフしまってくれませんかお願いしますギャアアア」 「うるさいなあ、ただナイフ突き付けてるだけじゃないか」 「ただ!?」 人間を愛していると豪語するあんたこそ人間じゃない!と声には出せないので心の中で盛大に叫んでやった。 とんでもない腐れ縁で、学校やクラスどころか席まで離れたことがない。席替えは毎度毎度くじ引きなのだが、絶対、こいつに仕組まれていることだろう。何が目的か知らないが、こちらとしてはとんでもない迷惑である。中学までは比較的控えめだったため放っていたのだが、高校に入ってから行いが派手になり(主に特定の人物との喧嘩)、必然的に隣の席のわたしには年がら年中喧嘩の火の粉が降りかかったり何したりと弊害を被り、友達どころか近付こうとしてくれるひとさえいなくなってしまった。百害あって一利無しとはまさにこのことだろうとしみじみ思う。 「だって静雄にちょっかい出すのって構って欲しいからでしょう?」 「君なんなの死ぬの?」 「え、ちがうの」 「死ぬの死にたいのどっちなの」 「それわたしが死ぬのしか選択肢なくない?」 「君が生きる意味が分からない」 「そろそろ泣くよ、ブロークンハートだよ」 「なにそれ嬉しい」 「うわあああん静雄おお!」 開いた扉からたまたまちらりと見えた静雄に泣きつく。優しい静雄は受け止めてくれたけれど折原が視界に入ったようですぐに教室の中へと消えた。窓ガラスが派手に割れる音がしたけど気にしない。わたしは気にしない。 ふたりの喧嘩が終わるまで身を護れるどこかに身を潜めようと歩きだした、そう、まさにそのとき。 「ねえ」 「!」 静雄と今まさにリアル鬼ごっこしてるはずの折原の声が背後からして反射的に振り返る。教室の扉から上半身だけ出している折原と目が合って数秒、 「今度俺の目の前でシズちゃんに抱き着いたら殺すよ」 掌握された心臓 「(きゅん)な、にそれ、まるでやきもちみたいだよ」 「なんでそうなるわけ、おめでたい脳だね」 「だって、」 「まあ君に先に目をつけたのは俺だからね。所有物がふらふらするのは気に食わないかな」 「ばかじゃないの」 |