※意味不明 世界の中でわたしが嫌いなものはふたつ。そのうちひとつはところてん。あれはだめだ、存在してはいけない。もう食べものですらない。まず近付けない。異臭に鼻がひんまがる。汚ならしいことを言うが、あれを口にした瞬間吐いた。噛む前に吐いた。からだが全力で拒否していた。不味いとか食感が嫌だとかそういう問題じゃない。あれは、そう、もはや兵器。核爆弾をたくさん積んだ大型戦車。アルテマウェポン。 そしてもうひとつが、 「もしもし生きてる?いい加減妄想の世界から帰っておいで、君のだあい好きなところてんを顔にぶちまけられたくなかったらね」 「あんただよ折原!」 「え、なにが」 ああそうさ、わたしが大っ嫌いなもうひとつがこの折原とかいう糞野郎だ! 口を開けばひとの神経を逆撫でして、そうでなくてもひとを愛してるとか変態窮まりない発言ばかりして。こいつの生態系の理解に苦しむ。本当に人間なのだろうか。地球に降り立った未確認生命体かなにかと言ったほうが近い気がする。 「ていうかさ」 「うるさい話しかけるな」 「酷いなあ、俺はただもう九時過ぎてるってわざわざ教えてあげようとしただけなのに」 「‥‥‥は、」 「可哀相に。せっかくの12年皆勤狙いが水の泡だね」 「ば、か野郎、もっと早く言え!」 せっかく今まで大雪降ろうと警報出て休校になろうと何しようと死ぬ思いで登校していたのに。折原のせいだ。こいつが朝から嫌と言うほど話しかけてくるからだ。最悪だ。わたしの生きがいが無くなってしまった。ちくしょう泣いてやる。 「ほら、学校行かないと遅刻にさえしてもらえないよ」 「うる、さい!お前なんかに言われなくても行くよ!」 鞄を引っ掴み大慌てで玄関に向かう。髪のセットも何もしてないけど諦めよう。ローファーに足を突っ込んでまるで体当たりでもするように体ごと扉を開けた。 時刻九時八分。二十分頃にはつけるだろうか。エレベーターを降りて全速力で走る。 「ねえ!」 頭上から聞こえたあの男の声に聞こえない振りをして走り続ける。いや、語弊だ。走り続けようとした。 「今日土曜日だよ!」 ‥‥‥‥あ、の野郎あとでぶっ殺してやる! ハロー糞野郎 「まさか本当に気付いてないなんて笑っちゃったよ」 「死ね。口を閉ざせ。わたしの涙を返せ。ていうか死ね。今すぐ死ね。できねーなら殺してやんよ!」 「殺せないくせに。きみ俺のことだいすきだろ?」 「、は?寝言は寝て言え!」 「あれ、おかしいなあ。きみの日記に俺のことばかり書いてあるから好きなのかと思った。折原は大トロが好きらしいとか折原があれをくれたとか色々」 「!!‥、おま、なに、み、」 「あ、真っ赤」 「っ、死ね!」 |