「いざや、さん?」 少しだけ開いた扉から視界が捉えたのは臨也さんと知らない女の子が重なっている瞬間、‥つまり、情事中という、こと、で、 気が付いたら外に逃げ出していた。 二年前来良を卒業してフリーターはいらんと家を追い出された後、何故か知り合いだった都市伝説の首無しライダーセルティを通じて知り合ったうさんくさい情報屋の元へ転がり込んだ。某有名映画のごとく「ここで働かせてください!」とだめもとで頼んだら、別に良いよとあっさり承諾されて逆にびっくりしたものだ。 部屋を共有するという半同棲状態で、眉目秀麗の臨也さんを意識するなと言う方が無理難題である。 イケメンでイケメンな上にイケメンで、性格さえ少しひんまがってるところがあるけれどイケメンだし、さらにイケメンな臨也さんの周りには当然女の子たちが群がる。彼はいつだか「駒にすぎない」と呟いていたけれど、わたしもそのひとりなのだろうか。二年経った今でも、臨也さんの中でわたしは数あるうちのひとりとしか認識されてないのだろうか。 わざわざ新宿から住み慣れていた池袋まで買い出しにいく日はいつもならゆっくり思い出に浸ってから帰るのに、どうしてだか今日に限って寄り道せずに早く帰宅してしまった。なんて運の悪い。朝テレビでやってた星占いは1位だったのになあ。うそつき。 一時間後、戻ったマンションにもう女の子はいなかった。かわりにいつもどおりの臨也さんがいて、いつもどおりの笑顔でいつもどおりおかえりって迎えてくれた。わたしもいつもどおりただいまですって返して、ぜんぶぜんぶいつもどおりのはずなのに。 「臨也さん、」 「うん?」 「すき。すきです、だいすき」 「うん、俺も大好きだよ」 臨也さんのばか。 欠ける |