※年齢制限もの 「んあっ、や、」 律動を繰り返す男の背中に爪をたてる。内壁を擦るそれを刺激するよう緩急をつけて締め付けた。 ああ、つまらない。 男女が主にベッドで行うもの、つまり性行為。今わたしとその行為の最中であるこの男はつい30分前、新宿駅前で会った男である。名は知らない。 何故こんな愚行に及んだかといえば、まあつまるところ声をかけられたからであり。今更自分のからだに愛着もないので断る理由もなくホテルへ来たと。それだけだ。わたしに言わせてみれば、ただ膣にそれをいれさせてやるだけのその行為に、どうして羞じらいを感じるのか甚だ理解出来ないのだが。 机上に置かれた三枚の紙幣をくしゃくしゃに丸めてダストボックスへ投げ込む。あの男、夥しい数の鬱血痕を散らばせた挙げ句、散々人のなかに白濁を吐き出し自分勝手な抽挿を繰り返しておいてたった三枚だなんて。本当腐ってる。 ‥腐ってるのは、わたしか。 「おかえり」 ソファにコートを脱ぎ捨てた直後、背後からの声に振り返る。 「いたの」 「いちゃいけなかったかな」 「うざい」 そいつとは恋人とかいうあたたかくて甘い関係では断じて無い。強いて言うなら情報提示者とその客。まあ高校時代からの付き合いでもあるのだが、言ってしまえば腐れ縁。非常にありがたくない腐れ縁。 「いくら欲しい?」 「いい」 「なん、」 「いい、いらない。はやく」 待てないとばかりに唇に噛み付けば、赤い双眸が見開かれた。 細い指が胸の先端を摘み捏ね回す。あげかけた嬌声を飲み込むように唇を塞がれた。生温かい舌で弄ばれ、なかなか進まない行為が焦れったくて膨張した彼のそれに手を伸ばす。 「だめ」 「やだ、まてない」 「だめ。今日は簡単にいれてあげないよ」 そう言われ掴まれた両腕は頭の上でひとつに押さえられた。もう片方の手で下着の上から割れ目を擦られからだがはねる。今日はとことん焦らしプレイらしい。 中途半端に下着を脱がされ入ってきたのは一本の指。はじめはスローペースだった抽挿が次第にエスカレートして抉るように掻き回す。 「んっ、んあ、やあっあっ」 「かーわい」 「いざ、やあっ、ぁ」 待ちきれなくて足を擦り合わせてみても彼は笑みを濃くするばかり。なんてひと。一本だったそれは二本三本と増えていく。 「あ、いぁ、っイく、‥‥?」 「だめだって言ったろ」 絶頂を迎える直前に彼の指があっさりと抜かれる。今日の臨也は心の底から意地が悪い。‥いや、彼のことだ。きっとわたしがそうされると興奮するのを熟知したうえで、こんなことをしている、の、だろう。 そんな考えを巡らせたときだった。 「ひあっ!」 いきなり挿し込まれたこいつのそれは朝の男より一回りも二回りも大きくて。わたしが感じるところをピンポイントで突いてくる。細い背中をかき抱いた。 「今日はどうしたの」 部屋を出て行こうとする後ろ姿に問い掛ける。室内にも関わらずファーのついたコートを着た彼は振り返らなかった。 「どうしたのって俺の科白。金を請求しないなんていつものきみらしくない」 「‥そう、だね」 フィルターを咥えて火をつける。たちのぼる煙を意味もなく注視した。 何故金を貰わなかったのか、それは自分でも良く分からない。いつもなら二桁は現金で頂くのだが、今日はどうしてもそんな気分になれなかった。言ったところで、理由は充分分かっているのだけれど。 「臨也」 「うん」 「すきかも」 「‥‥、ああ、もう」 火のついた煙草を白い指に抜き取られて、次にわかったのは抱き締められたということだけ。 固執 |