みじかい | ナノ



「政宗様‥っ!」


 幼少の頃祖父から受け継いだ、今は血に光る家宝の刀を惜し気もなく投げ捨てて倒れるお体を揺すった。瞑されたまま四肢を投げ出すそのお姿が滲んで良く見えない。なんたる不覚!小十郎様がおられない今、残る伊達軍兵すべてであなたさまをお守りすると誓ったのに。あんなにも容易く雑兵ごときに政宗様と剣を交じらわせるとは!それだけに留まらず敵主将と多くの隊大将に囲まれる政宗様をお助けに迎えないとは!不覚、不覚、不覚!


「御目をお開けくださいませ、政宗様、政宗さま、まさむね、さま‥!」


 わたしの力が及ばなかったばかりに。小十郎さま。わたしがあなただったなら。あなたがここで闘ってらっしゃったなら。きっと今政宗さまは無傷で前に立っていらしたのでしょう。いつもの凛々しい笑顔で異国語をお話しになっていらしたのでしょう。

 政宗さまをお守りするだなんて。傲りがすぎていたのだ。



 生きながらえた兵が各々負傷したからだを引きずりながら政宗さまの周りに集まる。筆頭、筆頭と耳に響く声にとうとう喚かずにはいられなかった。






 ああ、そうだな、不覚だ。背中を護るのは慣れてねえ。俺の惨敗だ。おい、俺を護ると言ったお前。生き延びて、そう、いつか。いつか俺の仇をとってみろ。今ここで自分は役立たずだと叫ぶお前が、俺の誇りになってみろ。


 それを最期に世界は黒く塗り潰された。



そして産声を上げる



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