「無理」 なにそれ。なんだそれ。なんなんだそれ。朝ニュースの占いでラッキーアイテムといわれ握っていた紙風船が潰れた音がした。 二年。二年前。雨の日だった。通勤通学ラッシュの電車に本当に入れなくて、仕様がなく次のやつに乗ろうと思った。生憎次の電車は30分後で、どう頑張っても学校には完全に遅刻。折角皆勤賞を狙っていたのに、なんて馬鹿な考え。諦めてウォークマンでも聴きながら待とうとバックを開けたときだった。 ごめん、通して。 ぱんぱんの車内の奥から現れた金髪は一度ホームに出ると人混みを中につめて、再び車内に戻った。そのひとの隣にはひとり分のスペース。手招きしてくれたのは見間違いなんかじゃなかった。 馬鹿な女だと笑え。同じ制服を着ていたとはいえ全然知らない男にちょっと優しくされただけですきだと感じたわたしを笑え。どうしようもなかったんだよ、あれぐらいで好意を抱くなんて自分でもありえないと思ったさ。でもすきになっちゃったんだよ、忘れられないんだよ、離れないんだよ。ああ、なんてベタな考えだろう! 「用事それだけ?悪いけど用事あるから」 「‥‥‥ええ」 音をたてて崩れたとは、まさにこのことだろうな、と。今まで生きてきた人生の総てを振り絞った勇気は、跡形もなく風にさらわれた。 「こんなひとだと思わなかった」なんて相手を知ろうとしなかった自身が悪いだけの残酷な言葉。でも本当にそう思ってしまったの。あの日助けてもらったとき、もうすでにわたしの中では「優しくて誠実なひと」になってしまっていた。ひとりで妄想して浮かれて落ち込んで、なんて痛い女。 段々と小さくなっていく後ろ姿をみて、違和感。いやどう見ても彼なんだけれど、いつもと違う。‥あれ、きのせいだったかな。 「‥‥‥あの!」 「‥なにおまえ、しつこい」 「覚えてらっしゃらないと思いますが、二年前、満員電車で助けてくれてありがとうございました!」 一瞬きょとんとした彼は無言で再び歩き出した。これでわたしも諦めがついたはず。帰ろうと身を翻した、ときだ。 「おいラジエルどこいくんだよ!」 「あ?」 「そっちじゃねーよ、こっちだって言ったろ!もう皆部屋とっちまっただろーが」 「黙れよベル。オレのせいじゃねー、女に足止め食らった」 「は?足止め?」 「よく聞いてねーけど二年前満員電車で助けてもらって惚れたらしいぜ」 「‥ラジエル、その子どっち行った?」 「そこ」 潰れた紙風船が、地に落ちた。 どうもはじめまして間違えてごめんなさい ちょっと、双子だなんて聞いてない! ごめんなさい、久々の更新がこんな意味不明な文章だなんて!スランプって怖い |