初めてひとを殺したときは酷い罪悪感にうなされた。5人目を殺したときは精神を壊しかけた。20人目を殺したときは自らを殺めようとした。100人目を殺したときは殺戮を愉しいとさえ感じていた。その頃にはもうひとを手に掛けることに躊躇いなど微塵も感じなかった。 4歳で両親が死んだ。5歳で組織に入れられ銃を手にした。9歳で育て上げてくれた祖父と祖母を射殺した。任務だった。初めての殺人。それからしばらくは極度に浅く短い睡眠を繰り返す。誰かがわたしを殺しに来るかもしれない、と もしかしたら気付いたときには殺されているかもしれない と夜が怖くてたまらなかった。 「なあ」 生まれてこのかた16年こんなに任務が危険だと感じたことはない。いや語弊だ。任務自体は簡単だった。ただ任務先に思わぬ客人が現れてしまった、それだけ。それだけなのにわたしは生きて帰れる自信がない。なんなら懸けてもいい。わたしに懸けるだけの価値のあるものは無いのだけれど。 「択ばせてやるよ、サボテンと嬲殺どっちがいい」 「わたしごときにあんたまでかりだされるとは」 「仕っ方ねーじゃんオレも任務だしお前要注意人物だし」 「じゃあ第3の選択肢「見逃す」ってことで」 「無理」 しししと笑うこいつもわたしと同じなのだと思う。ひとを殺すことに慣れすぎて愉しいのだろう。武器が寸分違わず的に当たることに達成感と優越感を感じずにはいられない。かわいそうに。ひととして欠落してしまったあなたも、わたし も 「約束しよう」 「は」 「あんたはわたしを殺す。わたしはあんたを殺す」 「なにそれ馬っ鹿じゃねーの、お前なんかに殺されるかよ」 「絶対はずすな。わたしも絶対はずさない。あんたを殺してあんたに殺されてやる」 「あっは、最高」 お前になら殺されてやってもいーよ。その言葉を引き金にお互い長年連れ添ってきた武器に手を伸ばした。 記念すべき1000人目を殺したとき愛した男に殺された 言い訳と呼ぶにも不完全 殺された はずだった 周りに何にもない丘の頂上にぽつんと建てられた墓に添えられた花束は枯れてばかりでお供えというには余りにそぐわないものだけれど墓前に佇む女はあんたにはお似合いねと言い捨てた。 あんたがあのとき殺してくれなかったからわたし今でも死ねないままだよ お願いだから殺しにきてよ、お前を殺せるわけねーじゃんってプリンスザリッパーの最期の言葉なんかに相応しくなんてないんだからさあ 本当 殺したいくらいむかつく男、さいごまで 主催企画サイト困惑に提出 |