みじかい | ナノ



 かちかちかちかち休む暇なく続くプッシュ音。隣に座る女は携帯とにらめっこを早二十分つづけている。最初はこれから遂行する任務内容の確認でもしてんのかと思ったけれどどうやら違うらしい。
 こいつは年頃のくせに昨日初めて携帯という存在を知った。スクアーロもといカスアーロに(人間とは思えないほどねだって)買ってもらったと言い回っていた。それ以来暇さえあればその小さな機械をいじりつづけているこいつは普段じゃ考えられないほど静かだ。いつも話相手にさせられる俺としてはありがたいが任務の安全上危険かもな。相手が電波を拾ってアジトの情報が流れる可能性がある。まあオレ王子だしやばい事態になる前に標的消せばいいだけだし特に問題はないんだけどさ。



 最後だと思う人間の脳髄に念入りに磨きあげたナイフを投げてジエンド。王子としてはもっといたぶりたかったけど時間も時間だし太陽が登る前に帰りたかったから瞬殺。意外に腕のたつ今回の任務の同行者である女に連絡をとるため携帯の電源を入れた。発信ボタンを押した数秒後すぐ後ろから聞こえた着信音に柄にもなく驚いて振り返る。携帯を耳にあて微笑んだそいつを見て携帯を閉じようと右手を動かそうとしたとき、


「もしもしわたしあなたがすきです」


 血まみれた部屋で二重に聞こえた唐突な告白はお前に気があるオレの頭を独占するには充分すぎた。



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