みじかい | ナノ



 日常茶飯事。開いてる窓から入って了承も得ず風呂場へ向かう男。もう文句を言う気力さえない。奥に消えたあいつのためにバスタオルを一枚と以前置いて帰った着替えを用意する。なんだかんだで世話をやいてしまうわたしもわたしだ。洗濯機に女物の香水のどきつい香りがする服を放り込みスタートボタンを一度押した。


「どこ」

「大通りの派手なとこ」


 あいつが風呂からあがるなりわたしは車を走らせた。助手席に当然のように座る男にはつい数十分前の名残はない。着いたのは夜でも眩しいホテル街。イルミネーションが他に比べ一段と激しい建物の前に車を止め彼を下ろす。二時間後来てと言い残し彼は外で待っていたかわいらしい女性と中に入って行った。

 あいつの趣味は女遊びだ。すば抜けた容姿のせいかあいつの隣には常に女がいる。そして情事後わたしの家でシャワーを浴びてまた情事のために出かける。まるでタクシー扱いされているわたしだがそれに対して不満など口にしたことはない。そんなことをしたら今の関係が泡と化すからだ。
 あいつをすきだと思う感情は随分昔に棄てた。叶う可能性など無いのだから。あいつはひとの愛情を何よりも嫌う、そんなものを少しでも口にしただけで次の日には完全に連絡が取れなくなるだろう。

 いまの関係が辛くないと言えば嘘になる。本当はあいしてる。ほかの女となんて寝て欲しくなどないしあいつのもの以外の香水のにおいだってかぎたくない。けれど臆病なわたしはどんな理由でもわたしを必要としてくれる彼を失いたくなくて撓めた情緒を封ずるのだ


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