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 1月1日午前0時、また一年が始まる。なんだか寂しくなって、少ないアドレス帳から選んで適当に電話をかけた。


『‥‥はい』

「もしもし。‥平和島くん?」

『おう。どうした』

「今、大丈夫?」

『?ああ』

「なんでもないんだけどね、‥なんか、声。聞きたくて」


 あれ、もしかして今わたしいろいろ言葉短縮しすぎて爆弾発言したんじゃないか。‥まあいいや、平和島くんだし。


「あけましておめでとう」

『‥お、ああ、‥おめでとう。今年もよろしくな』

「‥‥‥うん、よろしく‥‥今年も。いきなり電話してごめんね、おやすみ」

『あ、ちょっと待て』

「?」

『良く分かんねえけど。元気だせよ』

「‥‥!」

『じゃあな、‥おやすみ』


 ツーツーツー。電話が切れた音を耳に遺して電源ボタンを押した。残酷なことば。もう永く生きられないとわかっていて、どうして元気になれる人間がいるだろうか。何一つ悪くないのに、どうしても彼のせいにしてしまう。
 あなたはいつもそうやって、優しさでわたしの精一杯の強がりを粉々にするのだから。


「電話なんて、‥しなきゃよかった」










「名前ちゃん」


 医者に呼び止められて別室に案内される。嫌な予感しかしなかった。たくさんのレントゲンが貼られたボードの端に書かれた英数字の羅列に眩暈がした。


 わたしのために時間が止まることはない。






「検査の結果、あなたの心臓はあと1か月も、もちません」


 若いせいで進行が早いというのなら、わたしは若くなくてよかったのに。


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